性格の悪い消化器病、消化器内視鏡専門医が教える、刺激系下剤を長期処方する医者がヤブ医者な理由と正しい下剤の使い方性格の悪い消化器病、消化器内視鏡専門医が教える、刺激系下剤を長期処方する医者がヤブ医者な理由と正しい下剤の使い方

ブログ

下剤ソムリエ 性格の悪い消化器病、消化器内視鏡専門医が教える、刺激系下剤を長期処方する医者がヤブ医者である理由

こんにちは。

内視鏡といえば天白橋。天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田久嗣です。

患者さんが長期にわたって下剤を使用していると、
大腸内視鏡検査で腸の内壁の色調に変化が見られることがあります。
これは大腸メラノーシスと呼ばれる状態で、
特に大黄を含む漢方を服用している場合に見られます。
この状態では、腸の内壁がヒョウ柄のような褐色に変色しており、
これは色素沈着が原因です。

大腸メラノーシスにおける色素はリポフスチンというもので、
刺激性のある下剤によって腸の細胞が死ぬと、
その細胞をマクロファージが取り込み、その結果、
リポフスチンが生成されて沈着します。

ただし、色素沈着だけでなく、
この状態では腸の運動を司る神経もダメージを受けており、
腸の張力が失われることで弛緩性便秘という問題が発生します。

患者が1年間、原因となる便秘薬の使用を停止し、
他の薬剤に切り替えると、腸の色合いが正常に戻ります。

慢性便秘症の治療においては、大腸メラノーシスの改善に伴い、
腸の動きも正常化し、結果として便秘薬が不要になる場合もあります。

便秘治療薬には、様々なタイプが存在します。

大きく分けると、

1. 大腸刺激性下剤、2. 浸透圧性下剤、3. 上皮機能変容薬

の3種類に区分されます。

浸透圧性下剤には、酸化マグネシウムやモビコール®などがあります。
一方、上皮機能変容薬には、

グーフィス®、リンゼス®、アミティーザ®などが含まれています。

2番目と3番目のタイプは、
長期的に使用しても依存性が生じないとされています。


特に酸化マグネシウムは、薬局で容易に入手可能でコストも抑えられるため、
推奨される選択肢の一つです。

問題となるのは、1. の大腸刺激性下剤です。

大腸刺激性下剤には、①アントラキノン系、②ジフェノール系、③ジフェニルメタン系の下剤があります。

アントラキノン系には

センナ、アロエ、大黄(ダイオウ)、カスカラ、キャンドルブッシュ

があり、これらが大腸メラノーシスを引き起こす可能性があります。

センナを含む製品にはセンノシド®やプルゼニド®などがあります。

アロエを含む製品にはアロエ錠やアロエ粉末、アロエベラジュースがあります。

大黄を含む製品には様々な漢方薬やタケダ漢方便秘薬®、ナイシトール®などが含まれます。
また、カスカラはビーマス®やベンコール®などに含まれています。

ジフェノール系の代表的な製品には、

ピコスルファートナトリウム®やラキソベロン®などがあり、

アントラキノン系に比べて作用が穏やかとされています。

ジフェニルメタン系の下剤、ビサコジルは強力ですが、
副作用として嘔吐や腹痛が起こりやすいとされています。
代表的な製品にはコーラック®やビューラック®があり、
医療用ではレシカルボン坐薬®やテレミンソフト坐薬®があります。

大腸メラノーシスの原因となるのはアントラキノン系ですが、
弛緩性便秘は1~3のすべてのタイプで起こる可能性があります。

腸の色が変わっていなくても、刺激性下剤の長期使用は腸の運動機能を低下させ、便秘を悪化させることがあります。

刺激性下剤は、定期的ではなく「屯用」として、2~3日便が出ない時に

限定して
使用するようにしましょう。

注意すべきは、刺激性下剤に関して医師や薬剤師もその副作用を十分に理解していないことがある点です。

多くの人々は漢方薬が自然由来であるため体に安全だと考えがちですが、
大黄(ダイオウ)を含む漢方薬は、大腸メラノーシスや弛緩性便秘などのリスクをもたらす可能性があります。
このような副作用のリスクは、大黄が含まれていることに気づかずに処方する医療提供者や、
その成分の影響を知らない患者さんには特に注意が必要です。

特に注意が必要なのは、かつて痩身効果があるとして流行した
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。
まだクレクレ行ってくる人いますけどね😅

この漢方薬にも大黄が含まれており、
その下剤作用により一時的に体重が減少することがありますが、
これは実際の体脂肪の減少ではなく、
体重の変動を誤解してしまう原因となります。

大黄含有の漢方薬は、便秘治療に限定して慎重に使用すべきであり、
大黄を含まない便秘治療に有効な漢方薬としては、
大建中湯が存在します。

利用者は漢方薬の成分を理解し、適切な使用を心がける必要があります。

繰り返します。



注意すべきは、刺激性下剤に関して医師や薬剤師もその副作用を十分に理解していないことがある点です。

以前に市場に出回っていたいくつかの減肥茶やダイエットサプリメントには、
フェンフルラミンという、覚醒剤に似た成分が含まれていることがあり、
これが原因で日本においても死亡事故が発生しています。

現在も、個人輸入されるダイエット補助サプリメントには、
監視の網をかいくぐり、危険な成分が含まれている恐れがあります。
無理なく痩せることができるという魅力的な言葉に惑わされず、
その安全性に疑問を持つべきです。

もうひとつの懸念点は、

医師や薬剤師の処方箋なしに購入できることです。
もはや何か分からんくないです??よくそんなやばいやつ飲めますね🙄

例えば、センナを含むアントラキノン系の下剤は、
欧米では医師の処方箋が必要で、
それなしには入手できない規制がなされています。

日本では、センナの果実・小葉・葉柄・葉軸は医薬品として分類され、
これらを入手するためには医師や薬剤師の処方が必要です。
しかし、センノシド含有量が比較的低いセンナの茎は、
例外的に「下剤」として表示されなければ食品として自由に市場で流通させることができるという、
一風変わった規制が存在します。

さらに、同じアントラキノン系下剤であるアロエは、医薬品としてではなく、
食品として扱われているため、アロエ配合のジュースなどは問題なく購入することができます。

ダイエットを促進すると謳われている健康食品やサプリメント、ダイエット茶には、
センナやアロエのようなアントラキノン系の下剤成分がほぼ必ず含まれています。
これらの製品は、下剤作用による一時的な体重減少をダイエット効果があるかのように誤解させ、消費者から大きな利益を得ています。

健康に害を及ぼす可能性のある食品が、
医療専門家の指導を受けずに手に入れられる現状は、
非常に懸念される問題です。

特にセンナやアロエを含む健康食品は、
長期にわたって使用することで重度の便秘症に陥るリスクがあるため、
これらの製品は避けることを強くお勧めします。

センナを高濃度に含む製品については、
厚生労働省から注意喚起がなされています。

それでは、便秘の治療にはどのように対処すればよいのでしょうか?
多くの人がこの疑問を抱えているかもしれません。

一般的な選択肢としては、
まず酸化マグネシウムが挙げられます。マグネシウムの量の調整から色々いいお薬があります。

いきなりビンゴで排便コントロールがうまくいくことはあんまりなくて、

ちょっとずつお体に合った下剤の量や種類を調整していけたらいいと思います。

持病をお持ちの方は副作用のリスクも考えられますので、使用前には必ず主治医に相談してください。

全ては患者さんの
「検査しとけばよかった・・・」
を無くしたいから。
詳しくは当院の
ホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。

令和6年4月9日
天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣

・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
ホームページ
こちらをクリック)
その他のブログ一覧
こちらをクリック)
当院の採用情報
こちらをクリック)