脂質異常症(高脂血症)とは

脂質異常症は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)または中性脂肪(トリグリセライド)が基準値より高い、あるいはHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が基準値より低い状態を指します。これらの状態が続くと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まることが知られています。
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールが低い状態も含めるため、2007年に日本動脈硬化学会のガイドライン改訂で「脂質異常症」という名称に変更されました。ただし、高LDLコレステロール血症や高トリグリセライド血症など、脂質値が高くなる病態に対しては「高脂血症」という用語が引き続き使われることもあります。
脂質異常症の診断基準
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、以下の基準値が示されています。
| 項目 | 分類 | 基準値 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 高LDLコレステロール血症 | 140mg/dL以上 |
| 境界域高LDLコレステロール血症 | 120~139mg/dL | |
| HDLコレステロール | 低HDLコレステロール血症 | 40mg/dL未満 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 高トリグリセライド血症(空腹時) | 150mg/dL以上 |
| 高トリグリセライド血症(随時) | 175mg/dL以上 | |
| Non-HDLコレステロール | 高non-HDLコレステロール血症 | 170mg/dL以上 |
| 境界域高non-HDLコレステロール血症 | 150~169mg/dL |
※基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とし、空腹時であることが確認できない場合を「随時」とします。
脂質異常症の診断基準
脂質異常症には主に以下のタイプがあります。
LDLコレステロールの上昇
LDLコレステロールが高い状態が続くと、動脈の壁にコレステロールが蓄積しやすくなり、動脈硬化の進行に関連します。
HDLコレステロールの低下
HDLコレステロールは、余分なコレステロールを肝臓に運び戻す役割を持つとされており、値が低いと動脈硬化のリスクと関連します。
中性脂肪(トリグリセライド)の上昇
中性脂肪はエネルギーの貯蔵形態ですが、値が著しく高い場合、動脈硬化や急性膵炎のリスクと関連することが知られています。
脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれます
脂質異常症は自覚症状に乏しいため、健康診断などで指摘されて初めて気づくケースが多い疾患です。症状が現れるのは動脈硬化が進行し、合併症が引き起こされてからのことが多いとされています。
こんな方は脂質異常症にご注意ください
以下に当てはまる方は、脂質異常症のリスクが高いと考えられます。一つでも心当たりのある方は、当院までご相談ください。
- 健康診断でコレステロールや中性脂肪の数値が高いと指摘された方
- 肥満気味、またはメタボリックシンドロームと診断された方
- 高血圧、糖尿病を指摘されている方
- 喫煙習慣のある方
- 運動不足の方
- 食生活が不規則で、脂っこいものや甘いものをよく食べる方
- ご家族に脂質異常症や心筋梗塞・脳梗塞の方がいる方
脂質異常症の進行に伴う症状
進行例として、以下のような身体所見や合併症の兆候がみられる場合があります。
眼瞼黄色腫(がんけんおうしょくしゅ)
まぶたや目の周りにできる黄色い小さな隆起。コレステロールの沈着が原因とされます。
アキレス腱黄色腫(あきれすけんおうしょくしゅ)
アキレス腱や手の腱にできる硬いしこり。コレステロールの沈着が原因とされ、家族性高コレステロール血症の特徴的所見の一つです。
角膜輪(かくまくりん)
角膜の周りに白または灰色の輪が現れる所見。高齢者に多くみられますが、若年者で認められる場合は脂質異常症が疑われます。
脂質異常症が引き起こしうる合併症

動脈硬化が進行すると、以下のような合併症のリスクが高まります。
冠動脈疾患(心臓)
狭心症(胸の痛みや圧迫感、特に運動やストレス時)、心筋梗塞(強い胸の痛み、息切れ、冷や汗、吐き気など)。
脳血管疾患(脳)
脳梗塞、脳出血など。片側の手足の麻痺、言語障害、視力障害、意識障害などの症状が現れます。
末梢動脈疾患(手足)
間欠性跛行(歩行中に脚や足に痛みやしびれが生じ、休息で改善)、手足の冷感やしびれ。
急性膵炎
著明な高トリグリセライド血症では、急性膵炎のリスクが高まります。上腹部の激しい痛み、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が現れます。
脂質異常症(高脂血症)の原因
脂質異常症の原因は、大きく分けて原発性(体質によるもの)と続発性(他の疾患や生活習慣によるもの)があります。
原発性脂質異常症
遺伝的な要因や体質によって、脂質代謝に関わる酵素や受容体の働きに異常がある場合に起こります。代表的なものに家族性高コレステロール血症があり、若年期から狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが高まるため、早期の診断と治療が重要とされています。
続発性脂質異常症
生活習慣の乱れや他の疾患が原因で起こる脂質異常症です。改善が可能な要因が多いため、生活習慣の見直しや原因疾患の治療が重要になります。
食事の影響
飽和脂肪酸
肉の脂身(バラ肉、ひき肉、鶏肉の皮を含む)、バター、ラード、生クリーム、加工食品(インスタントラーメンなど)に多く含まれ、LDLコレステロール値の上昇に関連するとされています。
トランス脂肪酸
マーガリン、ショートニング、加工食品などに含まれます。
糖質の過剰摂取
精製された糖質、砂糖入りソフトドリンクなどの過剰摂取は中性脂肪の上昇と関連します。
生活習慣の影響
運動不足
エネルギー消費が低下し、HDLコレステロールの低下や中性脂肪の上昇に関連します。
喫煙
HDLコレステロールを低下させ、動脈硬化の進行に関連するとされています。
過度の飲酒
肝臓での中性脂肪合成を促進する要因となります。
関連する他疾患
- 糖尿病(インスリン抵抗性により脂質代謝異常を伴うことが多い)
- 甲状腺機能低下症
- 慢性腎臓病、ネフローゼ症候群
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
薬剤の影響
副腎皮質ステロイド、経口避妊薬、利尿薬、ベータ遮断薬などが脂質値に影響を与える場合があります。
その他の要因
加齢
年齢とともに脂質代謝が変化することが知られています。
閉経後の女性
エストロゲンの減少によりコレステロール値が上昇しやすくなる傾向があります。
脂質異常症(高脂血症)の治療方法
脂質異常症の治療は、生活習慣の改善を基本とし、必要に応じて薬物療法を併用します。治療の目標は、血液中の脂質値を適切な範囲に保ち、動脈硬化の進行を抑制し、心血管疾患の発症リスクを減らすことです。なお、治療効果には個人差があります。
1. 生活習慣の改善
食事療法
バランスの良い食事
野菜、果物、全粒穀物、魚、大豆製品、海藻類などを積極的に摂取します。
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の制限
肉の脂身、バター、加工食品、ファストフードなどを控えめにします。
コレステロールの多い食品の摂取制限
高LDLコレステロール血症の方は、コレステロール摂取量を1日200mg未満に抑えることが推奨されています。
食物繊維の積極的摂取
食物繊維はコレステロールの吸収を抑制する働きがあるとされており、オートミール、豆類、野菜、果物、きのこ類などから摂取します。
n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多く含まれるEPAやDHAは、中性脂肪を下げる働きがあるとされています。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、トリグリセライド低下を目的としたn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取が推奨されています。
運動療法
有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、中性脂肪を減少させ、HDLコレステロールを増加させる働きがあるとされています。
筋力トレーニング
基礎代謝の向上に役立ちます。運動を始める前には、ご自身の身体の状態を医師にご確認ください。無理のない範囲で継続することが大切です。
体重管理
適正な体重の維持は、脂質代謝の改善に役立つとされています。BMI(18~49歳:18.5~24.9、50~64歳:20.0~24.9、65歳以上:21.5~24.9)を目安に、エネルギー摂取量を調整します。
禁煙
喫煙はHDLコレステロールの低下や動脈硬化の進行と関連するため、禁煙が推奨されます。
飲酒の制限
過度の飲酒は中性脂肪を上昇させるため、適量を守ることが推奨されます。
2. 薬物療法
生活習慣の改善だけでは脂質値が十分に改善しない場合や、動脈硬化のリスクが高いと判断される場合、医師の判断のもと薬物療法を検討します。主な薬剤は以下のとおりです。なお、薬剤の効果や副作用には個人差があります。
スタチン系薬剤
肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを低下させます。
フィブラート系薬剤
肝臓での中性脂肪の合成抑制や分解促進により、中性脂肪を低下させます。
コレステロール吸収阻害薬(エゼチミブ)
小腸でのコレステロール吸収を抑える薬剤です。
EPA製剤
n-3系多価不飽和脂肪酸を含み、中性脂肪を低下させる作用があるとされています。
PCSK9阻害薬
LDL受容体の分解を抑え、LDLコレステロールを低下させる注射薬です。家族性高コレステロール血症などで使用が検討される場合があります。
薬剤の選択は、患者様の脂質値、合併症、年齢などを総合的に考慮して医師が判断します。自己判断での服用中止や用量変更は避け、必ず医師の指示に従ってください。
当院での高脂血症治療
天白橋内科内視鏡クリニックは、名古屋市天白区原に位置し、地下鉄鶴舞線「原」駅から徒歩2分の立地で、地域の皆様の生活習慣病管理をサポートしています。健康診断で「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘された方から、すでに動脈硬化のリスクを心配されている方まで、お一人おひとりの状態に合わせたきめ細やかな診療を行っています。
内視鏡クリニック併設だからできる、消化器も含めた総合的な評価
当院は内科診療と内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を併設しているクリニックです。脂質異常症は、肝臓に脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と関連が深いことが、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」でも示されています。また、内臓脂肪型肥満を伴うケースも少なくありません。
当院では、血液検査による脂質値の評価に加えて、超音波画像診断装置による腹部の評価や、必要に応じて内視鏡検査による消化器のチェックまで、一つのクリニック内でご対応いたします。生活習慣病の背景にある身体全体の状態を把握しやすい体制を整えております。
患者様一人ひとりに合わせた治療計画
脂質異常症の治療方針は、画一的なものではありません。年齢、性別、家族歴、他の生活習慣病の有無、ライフスタイルによって、最適な治療方針は大きく異なります。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、動脈硬化性疾患の絶対リスク評価に基づいた個別の脂質管理目標値の設定が示されています。
当院では、まず詳細な問診と血液検査を通じて、患者様の脂質プロファイル(LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)を把握いたします。そのうえで、生活習慣の改善で対応できる方には食事・運動指導を中心としたアプローチを、薬物療法が必要と判断される方には患者様の状態に適した薬剤を慎重に選択し、ご提案いたします。
スタチン系、フィブラート系、コレステロール吸収阻害薬など、各薬剤の特徴や注意点については診察時にご説明し、患者様にご納得いただいたうえで治療を進めております。なお、薬の効果や副作用には個人差がありますので、定期的な検査でフォローアップを行いながら、必要に応じて治療内容を調整いたします。
充実した連携医療機関とのネットワーク
脂質異常症の治療を進めるなかで、より専門的な検査や治療が必要と判断された際には、糖尿病内科クリニックをはじめとする信頼できる連携医療機関へご紹介いたします。また、より高度な医療が必要な場合には、名古屋記念病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院、名古屋市立大学病院、藤田医科大学病院、愛知医科大学病院などの基幹病院・大学病院とも連携体制を整えております。
当院単独で完結するのではなく、地域の医療ネットワークと連携しながら、患者様にとって適切な医療をご提案することを大切にしています。健康診断で脂質の異常を指摘された方、治療を始めようか迷われている方、現在他院で治療中で転院を検討されている方、いずれもお気軽にご相談ください。
脂質異常症(高脂血症)の治療の流れ
- 01 電話・オンライン予約
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電話予約
当院への診察予約は電話で受け付けております。受付時間内にお電話いただき、症状や希望する診察日時をお伝えください。
オンライン予約
当院のウェブサイトからも予約が可能です。ご希望の日時を選択し、必要な情報を入力して予約を完了してください。
- 02 来院
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受付
予約の日時にご来院いただき、受付にお声がけください。保険証や診察券(再診の方)をご提示いただき、問診票にご記入いただきます。
問診票の記入
問診票には現在の症状、既往歴、アレルギーなどの情報をご記入ください。医師が適切な診察を行うための重要な情報となります。
- 03 診察
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初診
医師が問診票をもとに、詳細な問診を行います。必要に応じて身体検査や各種検査を実施し、症状の原因を確認していきます。
検査
血液検査、尿検査、心電図など、必要な検査を実施します。検査項目によっては結果が後日になる場合もありますが、即日結果が出るものもあります。
- 04 診断と治療計画
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診断
検査結果をもとに、医師が診断を行います。診断内容とその根拠について、ご説明いたします。
治療計画のご提案
診断に基づき、治療方針をご提案します。薬物療法、生活習慣の改善、必要に応じて専門医療機関へのご紹介など、患者様の状態に応じた治療計画を立てます。治療のメリット・デメリットや起こりうる副作用についても、ご説明いたします。
- 05 治療
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薬物療法
処方箋を発行し、薬の服用方法や注意点をご説明します。
生活習慣の指導
食事、運動、禁煙、飲酒の制限など、具体的な生活習慣の改善方法についてアドバイスいたします。
フォローアップ
定期的な通院により治療の経過を確認します。必要に応じて治療計画の見直しを行います。
- 06 会計と次回予約
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診察後、受付で会計をお済ませください。お支払いは現金またはクレジットカードなどがご利用いただけます。必要に応じて、次回の診察予約をお取りください。
- 07 アフターケア
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診察後にご不明な点や症状の変化があれば、お電話やオンラインでお問い合わせください。当院では、患者様お一人おひとりに丁寧な対応を心がけております。
健康診断で脂質の異常を指摘された方、ご家族に心筋梗塞や脳梗塞の方がいてご心配な方、現在他院で治療中で転院を検討されている方、いずれもお気軽にご相談ください。名古屋市天白区の天白橋内科内視鏡クリニックが、皆様の健康と将来の生活の質を守るお手伝いをいたします。



