花粉症で咳が出る原因は?夜にひどくなる理由と自宅での対処法

花粉症で咳が出る原因は?夜にひどくなる理由と自宅での対処法

花粉症の季節になると、くしゃみや鼻水だけでなく、咳に悩まされる方も少なくありません。

「鼻の症状だけだと思っていたのに、咳まで出るのはなぜ?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、花粉症で咳が出る仕組みや夜に症状がひどくなりやすい理由、自宅でできる対処法について解説します。

咳の原因を正しく理解することで、日常生活で取り入れやすいセルフケアのヒントが見えてくるはずです。

監修者

天白橋内科内視鏡クリニック院長
野田 久嗣 Hisatsugu Noda

医学博士
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
がん治療認定医

▶ 院長のごあいさつ

花粉症で咳が出る原因を知る

花粉症で咳が出る背景には、体の防御反応としてのアレルギーの仕組みが関わっています。

花粉が体内に入ると、免疫システムがこれを異物と認識し、IgE抗体という物質を作り出します。この抗体がマスト細胞と結びつき、再び花粉が侵入した際に、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質を放出します。

これらの物質が喉や気管支の粘膜を刺激することで、咳が引き起こされるのです。

花粉症の咳には主に2つのパターンがあります。

それぞれの仕組みを理解しておくと、自分の症状に合った対策が見つけやすくなります。

喉の粘膜が刺激されることで起こる咳

花粉症で鼻づまりが起こると、鼻呼吸が困難になり、口呼吸に頼らざるを得なくなります。

鼻には本来、吸い込んだ空気を加湿・加温し、異物をキャッチして気管への侵入を防ぐ機能が備わっています。ところが口呼吸になると、この防御機能が働きません。

乾燥した空気や冷たい空気が直接喉に入り込むことで、喉の粘膜が乾燥しやすくなります。

さらに、花粉そのものが喉の粘膜に付着しやすい状態になってしまいます。粘膜に付着した花粉はアレルギー反応を引き起こし、喉のかゆみやイガイガ感、そして咳の原因となります。

花粉症の時期は、気道の粘膜全体が敏感になっている状態です。

このように刺激に対して過剰に反応しやすくなっている状態は、「気道過敏性が高まっている」と表現されることもあります。

そのため、普段なら気にならない程度の冷たい空気や乾燥、軽い刺激でも咳が出やすくなります。花粉症で出る咳は、痰を伴わない乾いた咳が特徴的です。

また、もともと喘息をお持ちの方は注意が必要です。喘息のある方では、アレルギー性鼻炎を併発しているケースも多く、花粉シーズンに咳が悪化することがあります。

喉への直接的な刺激を減らすには、なるべく鼻呼吸を維持することが大切です。鼻づまりがひどい場合は、点鼻薬の使用や鼻洗浄なども選択肢になります。

鼻水が喉に流れることで出る咳

花粉症で大量に分泌された鼻水が、喉の奥に流れ落ちることがあります。この状態を「後鼻漏(こうびろう)」と呼びます。

健康な状態でも、鼻腔では日常的に多くの粘液が分泌されており、その一部は自然に喉へ流れて飲み込まれています。

しかし、花粉症で鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、喉に溜まった鼻水が刺激となって咳を誘発します。

後鼻漏による咳はいくつかの特徴があり、次のような症状が見られます。

  • 喉の奥に何かが張り付いているような不快感
  • 痰が絡むような感覚
  • 横になると症状が悪化しやすい

特に、横になると鼻水が喉へ流れやすくなるため、就寝時や起床時に咳が出やすくなります。

日中は比較的落ち着いているのに、夜になると咳がひどくなるという方は、後鼻漏が原因の可能性があります。

後鼻漏による咳は、一般的な咳止め薬では効果が出にくい場合があります。鼻の炎症を抑える抗ヒスタミン薬や点鼻ステロイド薬によって、鼻水の分泌そのものを減らすことが有効な対策の一つです。

花粉症の咳が夜にひどくなりやすい理由

「日中はそれほどでもないのに、夜になると咳が止まらない」という経験をした方は多いのではないでしょうか。

花粉症による咳が夜間に悪化するのには、体の仕組みや環境が深く関係しています。

次の項目では、横になることで起こる体の変化や、就寝中に喉が乾きやすくなる影響について詳しく見ていきます。

横になることで起こる体の変化

就寝時に横になると、日中とは異なる体の変化が起こります。

立っているときや座っているときには重力の影響で下に流れていた鼻水が、横になることで喉の奥へ流れ込みやすくなります。これが後鼻漏による咳を悪化させる大きな要因です。

また、自律神経のバランスも関係しています。日中は交感神経が優位で体が活発に活動していますが、夜になると副交感神経が優位になり、体がリラックスモードに入ります。

副交感神経が優位になると気管支が狭くなりやすく、咳が出やすい状態になります。

免疫細胞の活動リズムも影響しています。山梨大学の研究によると、アレルギー反応に関わるマスト細胞は体内時計に合わせて活動しており、日中は比較的落ち着いていますが、夜間から朝方にかけて活発になることが明らかになっています。

これらの要因が重なることで、日中よりも夜間に咳が出やすくなるのです。なお、横になったときの咳は、上半身を少し高くして眠ることで和らげることができる場合があります。

就寝中に喉が乾きやすくなる影響

就寝中は唾液の分泌が減少するため、喉は乾燥しやすい状態になります。

特に花粉症で鼻づまりがある方は、睡眠中に無意識のうちに口呼吸になりがちです。その結果、喉の乾燥がさらに進みやすくなります。

乾燥した喉の粘膜は刺激に敏感になり、わずかな刺激でも咳が出やすい状態です。

さらに、エアコンや暖房の使用で寝室の空気が乾燥すると、喉への刺激が強まり、夜間の咳を悪化させる要因となります。

花粉症の咳を和らげる自宅での対処法

花粉症による咳を完全になくすことは難しいものの、日常生活の中でできる対策によって症状を和らげることは可能です。

対処法のポイント

  • 室内の花粉環境を整える
  • 花粉を室内に持ち込まない
  • 喉の粘膜を守る

これらを組み合わせることで、咳の症状を軽減できる可能性があります。

ただし、セルフケアを続けても症状が改善しない場合や、咳が長期間続く場合は、医療機関への相談をおすすめします

花粉症による咳を和らげる室内環境の整え方

室内を適切な環境に保つことは、花粉症による咳を和らげるために重要なポイントです。

特に加湿と掃除を意識することで、室内に漂う花粉や喉への刺激を減らすことができます。

室内を適切に加湿することは、花粉症の咳対策として有効な方法の一つです。加湿には主に次の2つの効果があります。

花粉の飛散を抑える

空気中の水分が花粉に付着すると、花粉は重くなって床に落ちやすくなります。雨の日に花粉症の症状が比較的楽になるのと同じ原理です。
加湿器を使って室内の湿度を上げることで、空気中を漂う花粉を減らすことができます。

粘膜のバリア機能を守る

喉や鼻の粘膜には、花粉やウイルスの侵入を防ぐ「繊毛(せんもう)」という細かな構造があります。乾燥するとこの繊毛の動きが鈍り、異物を排除する働きが弱まりやすくなります。
そのため、適度な湿度を保つことが、粘膜本来のバリア機能を維持するうえで大切です。

室内の湿度は40〜60%を目安に保つのが理想的です。湿度計を設置して、定期的にチェックするとよいでしょう。

また、加湿器を使用する際は本体のお手入れも欠かせません。水を毎日交換し、タンク内を清潔に保たないと、カビや雑菌が繁殖する原因になります。

加湿によって床に落ちた花粉は、フローリングワイパーや濡れ雑巾でやさしく拭き取るのがおすすめです。

掃除機を使うと花粉が再び舞い上がってしまう場合があるため、拭き掃除を優先するとよいでしょう。

花粉を室内に持ち込まない工夫

室内の花粉量を増やさないためには、外出先から花粉を持ち込まないことも大切です。日常のちょっとした工夫で、室内環境をより快適に保つことができます。

外出から帰ったら、玄関の外で衣類についた花粉を払い落としましょう。そのまま室内に入ると、花粉を家の中に持ち込んでしまいます。上着は玄関に掛け、リビングや寝室に持ち込まないようにするのも有効です。

帰宅後は、できるだけ早く洗顔やシャワーを浴びて、髪や肌についた花粉を落とすと、症状の悪化を防ぎやすくなります。

洗濯物や布団を外干しすると、花粉が付着しやすくなります。

花粉の飛散が多い時期は、室内干しを基本とするか、花粉の少ない日や時間帯を選んで干すとよいでしょう。

喉への負担を減らす生活習慣

喉の粘膜を守り、咳を和らげるために日常生活でできる工夫がいくつかあります。

喉の乾燥を防ぐために、こまめに水分を摂取しましょう。冷たい飲み物は喉を刺激することがあるため、常温の水や白湯がおすすめです。

カフェインやアルコールは利尿作用があり、かえって体の水分を減らしてしまうため、摂りすぎには注意が必要です。

外出後などのうがいは、喉に付着した花粉を洗い流す効果が期待できます。水だけでも効果はありますが、ぬるま湯に少量の塩を溶かした生理食塩水でうがいをすると、より粘膜への負担が少なくなります。

マスクを着用することで、吸い込む空気が適度に加湿され、喉の乾燥を防ぎやすくなります。

また、花粉が直接喉に入り込むのを減らす効果も期待できます。就寝時や外出時など、咳が出やすいタイミングで取り入れるとよいでしょう。

のど飴は、唾液の分泌を促し、喉の乾燥や違和感を和らげるのに役立つ場合があります。

メントールなど刺激の強いものは咳を誘発することがあるため、はちみつ入りなど喉を潤すタイプを選ぶのがおすすめです。

あくまで補助的な対策として、摂りすぎには注意しましょう。

それでも花粉症の咳が長引く場合の考え方

花粉症による咳は、花粉の飛散時期に合わせて症状が現れるのが一般的です。

しかし、花粉シーズンが終わっても咳が続いたり、年々症状が強くなっていると感じたりする場合は、花粉症以外の要因が関わっている可能性も考えられます。

花粉症による咳と、他の原因による咳では、適切な対処法が異なります。

セルフケアを続けても改善が見られない場合は、一度立ち止まって症状を見直し、医療機関で相談することが症状改善への近道になることもあります。

一時的な咳との違い

花粉症による咳は、花粉の飛散時期に合わせて続くのが特徴です。

一方、一般的な風邪による咳は、数日から1週間程度で自然に軽快することが多く、時間の経過とともに症状が変化していきます。

花粉症の咳は、はっきりとした発熱を伴わず、乾いた咳が続くケースが多い点も特徴です。

咳の出る時期や続く期間に違和感がある場合は、「一時的な咳」とは異なる可能性を意識することが大切です。

症状が続く場合に注意したい疾患と受診の目安

咳が2週間以上続く場合や、セルフケアを行っても改善しない場合は、以下の可能性も考慮する必要があります。

  • 咳喘息
  • アトピー咳嗽
  • 他のアレルギー疾患との併発

咳喘息は、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴わず、乾いた咳だけが長期間続く状態です。花粉症をきっかけに気道に炎症が起き、咳喘息に移行するケースがあります。

通常の咳止めでは効果が出にくく、吸入薬などによる治療が必要になる場合があります。

アトピー咳嗽は、アレルギー体質の方に見られる慢性的な咳で、喉のかゆみや痰が絡むような感覚を伴うことがあります。

花粉症の方は、ダニやハウスダストなど他のアレルギーを持っていることも多いです。花粉シーズンが終わっても咳が続く場合は、通年性のアレルギーが関与している可能性があります。

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

  • 咳が2週間以上続いている
  • 夜間の咳で睡眠に支障が出ている
  • 息苦しさや胸の圧迫感がある
  • ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音がする
  • 咳に血が混じる
  • 発熱を伴う

花粉症の咳と他の原因を見分ける視点

咳が出たとき、その原因が花粉症なのか、あるいは他の病気によるものなのかを見分けるのは簡単ではありません。

特に花粉シーズンは風邪が流行する時期と重なることも多く、症状が似ているため混同しやすくなります。

正確な原因を特定するには医療機関での検査が必要ですが、いくつかのポイントを知っておくことで、受診を検討する際の目安になります。

花粉症以外の可能性を考える目安

咳の原因が花粉症以外にある可能性を示すサインがあります。

風邪やウイルス感染症の可能性

  • 発熱を伴う(37度台後半以上になることが多い)
  • 咳が始まってから比較的短期間で軽快することが多い
  • のどの痛みが強い
  • 最初は乾いた咳だが、徐々に痰が絡むようになる
  • 天候や花粉の飛散状況に関係なく症状が出る

風邪の場合、くしゃみや鼻水の症状は花粉症と似ていますが、目のかゆみを伴うことはほとんどありません。

また、鼻水の性状も異なり、風邪では粘り気があり黄色っぽくなることがあるのに対し、花粉症ではサラサラとした透明な鼻水が特徴です。

喘息の可能性

  • 呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューという音がする
  • 息苦しさや胸の圧迫感がある
  • 花粉シーズン以外でも咳が出る
  • 冷たい空気を吸うと悪化する
  • 運動や夜間・早朝に咳が出やすい

花粉症の方の中には、花粉をきっかけにもともとあった喘息の症状が悪化するケースがあります。

自分で判断しにくいケース

以下のような場合は、自己判断が難しいため、医療機関での相談をおすすめします。

複数のアレルギーを持っている場合

スギ花粉だけでなく、ヒノキ、イネ科、ダニ、ハウスダストなど複数のアレルゲンに反応する方は、症状が重なり合い、原因の特定が難しくなることがあります。

血液検査などでどのアレルゲンに反応しているかを調べることで、より的確な対策が可能になります。

今まで花粉症になったことがない場合

花粉症は、ある日突然発症することがあります。

これまで花粉症と無縁だった方が初めて症状を経験した場合、風邪や他の病気との区別がつきにくいことも少なくありません。

症状が長引く場合は、アレルギー検査を検討してみるとよいでしょう。

市販薬の効果が感じられない場合

花粉症の薬を使用しても咳が改善しない場合、花粉症以外の原因が関係している可能性があります。

特に咳止め薬を使っても効果が乏しい場合は、後鼻漏や咳喘息など、別のアプローチが必要な状態が考えられます。

医療機関では、症状の経過を詳しく確認したうえで、必要に応じて血液検査や胸部レントゲンなどの画像検査、呼吸機能検査などが行われます。

原因がはっきりすれば、より効果的な治療につなげることができます。症状がつらいときは、一人で我慢せず、専門家に相談してみてください。