花粉症の季節になると、くしゃみや鼻水だけでなく、鼻づまりに悩まされる方は少なくありません。
息苦しさで集中力が続かない、夜ぐっすり眠れないなど、日常生活への影響を実感している方も多いでしょう。
花粉症の鼻づまりは、花粉が鼻の粘膜に付着してアレルギー反応を起こし、粘膜が腫れることで生じます。くしゃみや鼻水と比べて症状が時間差で強まりやすく、特に夜間や朝に悪化しやすいのが特徴です。
この記事では、花粉症で鼻づまりが起こる仕組みや悪化しやすい時間帯に加え、睡眠への影響、自分でできるセルフケア、そして医療機関への相談を検討する目安までを解説します。
監修者

天白橋内科内視鏡クリニック院長
野田 久嗣 Hisatsugu Noda
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
がん治療認定医
花粉症で鼻づまりが起こる仕組み
花粉症による鼻づまりは、単に鼻水が溜まって詰まるわけではありません。体の免疫システムが花粉を「異物」と認識し、排除しようとする過程で炎症が起こり、鼻の粘膜が腫れることが主な原因です。
この仕組みを理解しておくと、なぜ鼻づまりの症状が長引きやすいのか、どのような対策が有効なのかが見えてきます。
鼻の粘膜が腫れる流れ
花粉が鼻の粘膜に付着すると、体内の免疫システムが反応を始めます。花粉を異物と認識した体では、IgE抗体が関与し、肥満細胞(マスト細胞)が反応しやすい状態になります。
再び花粉が侵入すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質が放出されます。
くしゃみや鼻水は主にヒスタミンの作用で起こりますが、鼻づまりはロイコトリエンの影響が大きいとされています。ロイコトリエンには血管を拡張させる作用があり、これによって鼻の粘膜が腫れ上がります。
粘膜が腫れると鼻腔内の空気の通り道が狭くなり、鼻で呼吸しにくい状態、つまり鼻づまりが起こるのです。鼻をかんでも改善しにくいのは、鼻水が詰まっているのではなく粘膜自体が腫れているためです。
この点がくしゃみや鼻水とは異なる、鼻づまり特有のつらさといえます。
花粉による刺激の影響
花粉に対するアレルギー反応には、大きく分けて2種類の反応があります。
- 即時相反応(すぐに現れる反応)花粉を吸い込んでから数分~数十分以内に起こる
- 遅発相反応6時間から10時間ほど経過してから現れる
くしゃみや水のような鼻水は即時相反応として比較的早く現れますが、粘膜の腫れや鼻づまりは遅発相反応として時間差で症状が出やすい傾向があります。
日中に外出して多くの花粉を吸い込むと、その影響が夜間に鼻づまりとして現れることがあるのはこのためです。帰宅後に窓を閉め切っていても症状が続く場合、遅発相反応が関与していると考えられます。
花粉に繰り返しさらされることで鼻の粘膜は次第に過敏になっていきます。シーズン初めは軽い症状だったのに、時間が経つにつれて鼻づまりがひどくなるケースも珍しくありません。
花粉の量が少ない日でも症状が出やすくなるのは、粘膜の過敏性が高まっているからです。
花粉症の鼻づまりが悪化しやすい時間帯
花粉症の症状は1日を通して一定ではなく、特定の時間帯に強く現れる傾向があります。「夜になると鼻が詰まって眠れない」「朝起きた瞬間から症状がつらい」という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
このような時間帯による症状の変化には、自律神経の働きやアレルギー反応の特性が関係しています。
夜に詰まりやすくなる理由
夜間に鼻づまりが悪化する背景には、いくつかの要因が絡み合っています。
自律神経の切り替わり
日中は交感神経が優位に働いて血管が収縮していますが、夜になると副交感神経が優位になり、血管が拡張します。
鼻の粘膜には多くの血管が通っているため、血管が拡張すると粘膜が腫れやすくなります。
遅発相反応の影響
前述した通り、日中に吸い込んだ花粉の影響が、遅発相反応として夜間に現れることがあります。
花粉を吸い込んでから6〜10時間ほど経過して鼻づまりの症状が出るため、昼間の外出が就寝時間帯と重なりやすいのです。
室内に持ち込まれた花粉
帰宅時に髪や衣服に付着した花粉が室内に持ち込まれ、床や寝具に蓄積していきます。
夜間の人の動きによって花粉が舞い上がり、それを吸い込んでしまうことも症状悪化の一因です。
就寝時の姿勢
仰向けで寝ると鼻粘膜の血流が増加して腫れやすくなるため、日中は気にならなかった鼻づまりが就寝時に強く感じられることがあります。
朝に不快感が残りやすい要因
朝起きた瞬間から鼻水やくしゃみ、鼻づまりがひどくなる現象は「モーニングアタック」と呼ばれています。起床時を最もつらい時間帯として挙げる人が多いとする報告もあり、朝の不調に悩む方は少なくありません。
起床時の自律神経バランスの変化
モーニングアタックの主な原因の一つは、起床時の自律神経バランスの乱れです。睡眠中は副交感神経が優位ですが、目覚めとともに交感神経へと切り替わります。
この移行期に一時的にバランスが崩れ、鼻の粘膜が過敏な状態になると考えられています。
寝具や床にたまった花粉・ハウスダスト
加えて、就寝中に床や寝具に落ちた花粉やハウスダストを吸い込んでいることも関係しています。
起き上がる動作や布団をたたむ際にこれらが舞い上がり、まとめて吸い込んでしまうと症状が一気に悪化します。
朝に強まりやすい炎症反応
アレルギー性鼻炎では、朝の鼻水に炎症を誘導する物質が増加しているという報告もあり、これがアレルギー反応を強めている可能性も指摘されています。
モーニングアタックによる症状は、朝の通勤時を経て午前中にピークを迎える傾向があります。朝から調子が悪いと1日の仕事や家事に影響が出やすいため、前夜からの対策が大切になってきます。
花粉症の鼻づまりが睡眠に与える影響
花粉症の症状の中でも、鼻づまりは特に睡眠への影響が大きいとされています。
鼻が詰まると口呼吸になりやすく、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする原因になります。その結果、日中の眠気や疲労感、集中力の低下といった不調につながることも少なくありません。
鼻づまりと睡眠の関係を知っておくことで、対策の必要性がより明確になります。
寝つきが悪くなる理由
鼻づまりがあると、横になった途端に息苦しさを感じて眠りにつきにくくなります。これは単なる気のせいではなく、体の仕組みとして説明できます。
鼻呼吸ができなくなると、自然と口で呼吸するようになります。口呼吸では呼吸が浅くなりやすく、喉や気道が乾燥しやすくなるため、不快感が増してしまいます。
喉の乾燥は咳の原因になることもあり、さらに寝つきの悪さにつながります。
花粉症の症状が原因で眠れないと感じた経験がある人は多く、就寝前に「鼻がつまってうまく寝つけない」と悩むケースも少なくありません。
鼻づまりで眠れないからといって、寝る前にお酒を飲んでリラックスしようとするのは逆効果です。アルコールには血管を広げる作用があり、鼻の粘膜の腫れをさらに強めてしまう可能性があります。
眠りが浅くなる要因
眠りについたとしても、鼻づまりがあると睡眠の質は低下しやすくなります。鼻呼吸ができない状態が続くことで、睡眠が浅くなり、脳や体が十分に休まらなくなるためです。
口呼吸になると舌の根元がのどの奥に落ち込みやすくなり、気道が狭くなります。その結果、いびきをかきやすくなり、呼吸が乱れることで睡眠の質が下がることがあります。
また、夜中に何度も目が覚めてしまうことも、睡眠の質を下げる要因です。寝具や髪に付着した花粉がアレルギー症状を悪化させ、鼻づまりによる中途覚醒を繰り返すと、深い眠りが妨げられます。
睡眠の質が低下すると、翌日に影響が出ることもあります。日中の眠気や倦怠感、頭がぼんやりする感覚は、花粉症の症状そのものだけでなく、十分に眠れていないことが原因かもしれません。
仕事や学業のパフォーマンス低下にもつながるため、鼻づまりの対策は睡眠の観点からも重要です。
花粉症の鼻づまりを和らげるセルフケア
鼻づまりがつらいとき、医療機関を受診する前に自宅でできる対処法があります。
即効性のある方法から日常的に取り入れたい習慣まで、いくつかのセルフケアを知っておくと症状を和らげる助けになります。
ただし、これらはあくまで一時的な対処であり、症状が長引く場合や生活に支障が出るほどつらい場合は医師への相談を検討してください。
鼻を温める工夫
温かい蒸しタオルを鼻にあてると、血行が促されて鼻腔が広がり、一時的に鼻の通りが改善することがあります。
やり方は簡単です。タオルを水で濡らして固く絞り、電子レンジで30秒から1分ほど温めます。やけどに注意しながら、鼻の付け根から鼻の穴あたりにタオルをあて、鼻呼吸をしてみましょう。
温かい蒸気を吸い込むことで、鼻の中に適度な湿り気が与えられ、粘膜の状態が整いやすくなります。
入浴も効果的です。湯船につかって体を温めると血行が良くなり、鼻づまりが楽になることがあります。就寝前に入浴すると、血行が良い状態で眠りにつけるため、夜間の鼻づまり対策としても有効です。
鼻づまりがある側を上にして横向きで寝る方法もあります。下になった側の脇が圧迫されることで、反対側の交感神経の活動が高まり、鼻の血管が収縮して通りが良くなることがあるとされています。
呼吸を楽にする生活習慣
室内の湿度管理は鼻づまり対策として見落とされがちですが、乾燥した空気は鼻の粘膜を刺激し、症状を悪化させることがあります。
加湿器を活用して部屋の湿度を40%から60%程度に保つと、鼻の調子が整いやすくなります。
部屋の加湿には別のメリットもあります。花粉は水分を含むと重くなって床に落ちやすくなるため、室内での飛散を抑える効果も期待できます。
落ちた花粉はフローリングワイパーや雑巾でこまめに拭き取りましょう。
鼻うがい(鼻洗浄)も有効な方法のひとつです。生理食塩水で鼻の中を洗い流すことで、付着した花粉や溜まった鼻水を除去できます。市販の鼻洗浄キットを使えば自宅でも手軽に行えます。
アルコールには血管を拡張させる作用があるため、鼻の粘膜が腫れやすくなります。症状がつらい時期は飲酒を控えめにするのが賢明です。
規則正しい生活を心がけ、睡眠を十分にとることも基本的な対策です。生活リズムが乱れると自律神経のバランスが崩れ、症状が出やすくなる傾向があります。
花粉症の鼻づまりが続く場合の考え方
セルフケアを試しても症状が改善しない、あるいは生活に支障が出るほどつらい場合は、医療機関への相談を検討する段階かもしれません。
花粉症は市販薬でも対処できることがありますが、症状のタイプや重症度によっては医師の診察を受けた方が効果的な治療につながるケースもあります。
自分で対処できる範囲と、専門家に相談すべきタイミングを見極めることが大切です。
自分で対処できる範囲の目安
軽い鼻づまりであれば、セルフケアや市販薬で症状をコントロールできることもあります。
市販の抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使用して、日常生活に大きな支障がない程度に抑えられているなら、まずは様子を見ても良いでしょう。
ただし、市販の点鼻薬(血管収縮剤を含むもの)を長期間使い続けると、かえって鼻づまりが悪化する「薬剤性鼻炎」を起こすことがあります。連用は避け、使用期間や回数は必ず製品の用法・用量を守るようにしてください。
花粉が飛散している期間は症状が続くのが花粉症の特徴ですが、スギ・ヒノキのシーズンなら例年5月下旬頃には落ち着いてくるはずです。シーズンが終わっても症状が続く場合は、別の原因がある可能性も考えられます。
改善しにくい場合の判断軸
医療機関の受診を検討する状況
- 鼻が1日中詰まっていて口呼吸が中心になっている
- 鼻づまりで夜眠れない日が続いている
- 市販薬を使っても症状が改善しない
- 仕事や勉強に集中できないほど症状がつらい
- 頭痛や倦怠感など全身症状を伴う
鼻づまりの症状が強い場合は、耳鼻咽喉科の受診がおすすめです。鼻の状態を内視鏡で詳しく調べることができ、花粉症以外の原因(副鼻腔炎や鼻中隔の問題など)がないかも確認してもらえます。
医療機関では、症状のタイプや重症度に応じた薬の組み合わせを処方してもらえます。くしゃみ・鼻水型と鼻づまり型では効果的な薬が異なるため、自分の症状を具体的に伝えることが大切です。
また、毎年症状に悩まされている方は、花粉が飛び始める前から治療を開始する「初期療法」や、体質改善を目指す「舌下免疫療法」について医師に相談してみるのも選択肢のひとつです。これらは医師の指導のもとで行う治療になります。