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検診で血糖が高いといわれました。糖尿病ですか?

みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。

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「検診で血糖値が高いと言われたけど、糖尿病なのかな?」

健康診断の結果に、こんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか? 実は、糖尿病は、日本人の5人に1人が罹患している、もはや国民病ともいえる身近な病気です。初期の段階では自覚症状が出にくいため、気が付かないうちに病気が進行し、様々な合併症を引き起こしてしまう可能性も。

この記事では、糖尿病検査の種類や診断基準、そして、治療法や合併症について詳しく解説します。血糖値が高いと診断された場合でも、適切な治療と生活習慣の改善によって、健康的な生活を送ることができます。ご自身の健康状態を把握し、糖尿病を正しく理解することで、安心できる未来を築きましょう。

糖尿病検査の種類とその方法5選

「検診で血糖値が高いと言われたけど、糖尿病なのでしょうか?」

健康診断などで血糖値が高いと指摘されると、誰でも不安になりますよね。私自身も、医師として多くの患者さんを診てきましたが、やはり「血糖値が高い」と告げられると、皆さん少なからずショックを受けている様子です。

糖尿病は早期発見・早期治療が大切な病気です。ご自身の健康を守るためにも、まずは糖尿病検査の種類と、それぞれの検査方法について詳しく知っていきましょう。

一般的な血液検査とその流れ

病院で糖尿病を疑う場合に行われる、基本的な血液検査とその流れを、レストランでの食事に例えてみましょう。

  1. 採血: まずは血液を採取します。これは、レストランで注文をするようなものです。「今日の健康状態を知るための検査をお願いします!」と、体の中の情報を教えてもらうための第一歩です。注射が苦手な方もご安心ください。看護師さんが優しく対応しますので、ご心配なことがあればお気軽にお申し付けください。
  2. 血糖値の測定: 採血した血液から、血糖値を測定します。血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量のことです。レストランで例えるなら、今まさに運ばれてきた料理のようなものです。食後すぐは血糖値が急上昇しますが、時間が経つにつれて徐々に下がっていきます。
  3. HbA1c検査: HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査では、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を調べることができます。これは、過去にそのレストランで何を食べてきたのか、という記録を見るようなものです。甘いものばかり食べていれば、HbA1cの値は高くなりますし、バランスの取れた食事をしていれば、HbA1cの値は安定します。
  4. 結果説明: 検査結果が出たら、医師が検査結果について丁寧に説明します。数値がどういった意味を持つのか、糖尿病の疑いがあるのかどうか、今後の検査や治療方針などについてご説明しますので、ご安心ください。検査結果の説明は、レストランのシェフから料理の説明を受けるようなものです。「あなたの健康状態はこうでした。今後、より健康的な状態を保つためには、このような食事を心がけましょう」といったアドバイスをもらえます。

糖尿病の診断には、血糖値やHbA1cの値が重要な指標となります。これらの検査を通して、糖尿病の早期発見・早期治療を目指します。

HbA1c検査の重要性と結果の読み方

HbA1c検査は、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映するため、糖尿病の診断や治療効果の判定に非常に重要な検査です。

HbA1c検査でわかること

  • 血糖コントロールの状態:これは、あなたが毎日どれくらいきちんと血糖値をコントロールできているかを示すものです。
  • 糖尿病の進行度:糖尿病がどの程度進行しているのかを知る手がかりになります。
  • 治療効果の判定:行っている治療がどれくらい効果が出ているのかを判断する材料になります。

HbA1c検査は、採血するだけで簡単に測定できます。

HbA1c検査の結果の見方

HbA1cの値は%で表されます。数値が大きいほど、血糖コントロールが悪く、糖尿病のリスクが高いことを示します。

HbA1c(%) 判定 具体的な例
~5.9 糖尿病でない 健康な状態です。
6.0~6.4 糖尿病予備群 糖尿病のリスクが高まっている状態です。食生活や運動習慣を見直すようにしましょう。
6.5以上 糖尿病と診断される 糖尿病と診断されます。医師の指示に従い、適切な治療を開始する必要があります。

HbA1c検査の結果は、あくまでも目安です。糖尿病の診断は、医師による総合的な判断に基づいて行われます。HbA1c検査は、糖尿病の診断や治療効果の判定に重要な検査ですが、あくまで1つの指標に過ぎません。例えば、貧血がある場合や、妊娠中などでは、HbA1cの値が本来の血糖コントロールの状態を反映しないことがあります。糖尿病の診断には、HbA1c検査だけでなく、血糖値やその他の検査結果も総合的に判断する必要があるのです。

尿検査が示す糖尿病の兆候

尿検査は、尿中の糖の量を調べることで、糖尿病のサインを見つけるための検査です。昔は、糖尿病の診断に尿検査がよく用いられていました。甘いものが貴重だった時代、お医者さんは患者さんの尿を舐めて、糖尿病かどうかを判断していたという話も聞いたことがあるかもしれません。

尿検査でわかること

  • 尿糖の有無:尿の中に糖が混じっていないかを調べます。
  • 尿蛋白の有無:尿の中にタンパク質が混じっていないかを調べます。

健康な人の尿には、通常、糖はほとんど含まれていません。しかし、血糖値が非常に高くなると、血液中の糖が尿中に漏れ出てしまうことがあります。これが「尿糖」です。砂糖をたくさん溶かした水溶液を想像してみてください。水溶液が濃すぎると、砂糖が溶けきれずに結晶として出てきてしまいますよね。これと同じように、血液中のブドウ糖の濃度が高すぎると、尿の中に漏れ出てしまうのです。

尿検査で尿糖が検出された場合、糖尿病の可能性があります。特に、空腹時の尿検査で尿糖が陽性であれば、糖尿病の可能性が高いと言えます。

尿検査の注意点

尿検査は、あくまでもスクリーニング検査であり、糖尿病の確定診断には、血液検査が必要です。また、尿糖は、一時的な血糖値の上昇や、腎臓の機能低下などによっても出現することがあります。例えば、激しい運動をした後や、ストレスを感じている時などは、一時的に血糖値が上昇することがあります。また、腎臓の機能が低下していると、尿の中に糖が漏れ出てしまうことがあります。

血糖値を測定するための自己検査法

自己血糖測定器を用いることで、自宅で簡単に血糖値を測定することができます。これは、例えるなら、自宅で手軽に健康状態をチェックできる「家庭用健康チェックキット」のようなものです。

自己血糖測定器の使い方

  1. センサーに針をセットします。
  2. 指先を消毒し、針を刺して血液を採取します。
  3. センサーに血液をたらし、測定器にセットします。
  4. 測定結果が表示されます。

自己血糖測定のメリット

  • 自宅で簡単に血糖値を測定できるため、通院の負担を軽減できます。
  • 自分の血糖値の変化を把握することで、食生活や運動習慣などの改善に役立てることができます。

自己血糖測定の注意点

  • 測定器やセンサーは、正しく使用しないと、正確な値が得られないことがあります。
  • 自己血糖測定の結果だけで、治療方針を判断することはできません。必ず医師に相談してください。

検査を受けるタイミングと注意点

糖尿病検査は、症状がない場合でも、定期的に受けることが大切です。特に、以下の様な方は、糖尿病のリスクが高いと言われているため、積極的に検査を受けるようにしましょう。

糖尿病検査を受けるべきタイミング

  • 健康診断などで血糖値が高いと指摘された場合:健康診断は、自分では気づかない病気のサインを見つけるための貴重な機会です。血糖値が高いと指摘された場合は、放置せずに、医療機関を受診して、詳しく検査を受けてみましょう。
  • 糖尿病の家族歴がある場合:糖尿病は、遺伝的な要因が大きい病気としても知られています。家族に糖尿病の方がいる場合は、そうでない方と比べて、糖尿病を発症するリスクが高くなります。
  • 肥満気味である場合:肥満は、糖尿病の大きなリスクファクターの一つです。肥満になると、インスリンというホルモンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなってしまいます。
  • 高血圧や脂質異常症などの生活習慣病がある場合:高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は、糖尿病と密接に関係しています。これらの病気を持っている方は、そうでない方と比べて、糖尿病を発症するリスクが高くなります。
  • 40歳以上の場合:40歳を過ぎると、誰でも糖尿病のリスクが高くなります。これは、加齢とともに、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの働きが悪くなったりするためです。

糖尿病検査を受ける際の注意点

  • 検査を受ける前に、食事や運動、服薬などについて、医師に相談しておきましょう。
  • 検査結果については、自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。

糖尿病の早期発見・早期治療のためにも、定期的な検査を心がけましょう。

糖尿病診断基準と高血糖の理解4つのポイント

「検診で血糖値が高いと言われたけど、これって糖尿病になるの?」

健康診断後、こんな不安を抱えていませんか? 多くの方が、糖尿病という病気を、どこか他人事のように感じているかもしれません。しかし、糖尿病は決して他人事ではありません。厚生労働省の調査によると、糖尿病が強く疑われる人は約1,200万人、糖尿病の可能性を否定できない人も約1,000万人と報告されており、まさに「国民病」ともいえる身近な病気なのです。

糖尿病は、初期の段階では自覚症状が現れにくいという特徴があります。そのため、知らないうちに病気が進行し、様々な合併症を引き起こしてしまうリスクも孕んでいます。

今回は、糖尿病の診断基準となる血糖値やHbA1cといった指標について、具体的な数値を交えながら分かりやすく解説していきます。ご自身の健康状態を把握し、糖尿病を正しく理解するために、ぜひ最後までお読みください。

糖尿病の診断に必要な基準値とは

糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値が高い状態が続く病気です。では、どのくらい高ければ糖尿病と診断されるのでしょうか?

糖尿病の診断には、大きく分けて以下の3つの検査項目と、それぞれの基準値が用いられます。

  1. 空腹時血糖値: その名の通り、何も食べていない状態での血糖値です。
  2. 75g経口ブドウ糖負荷試験 2時間値: ブドウ糖75gを水に溶かして飲み、2時間後の血糖値を測定します。
  3. HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー): 過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する値です。

具体的な基準値は以下の通りです。

検査項目 基準値
空腹時血糖値 126mg/dL以上
75g経口ブドウ糖負荷試験 2時間値 200mg/dL以上
HbA1c 6.5%以上

これらの基準値のいずれかを満たす場合、糖尿病と診断される可能性があります。

例えば、健康診断で空腹時血糖値が130mg/dLだったとします。これは、基準値である126mg/dLを超えているため、糖尿病の可能性を示唆しています。しかし、1回の検査だけで直ちに糖尿病と断定されるわけではありません。糖尿病の診断は、あくまで医師による総合的な判断に基づいて行われます。

高血糖とは?具体的な数値の解説

「高血糖」とは、読んで字のごとく、血液中のブドウ糖の濃度である血糖値が高い状態を指します。

私たちの体は、食事から摂取した糖質をエネルギー源として利用しています。通常、食事をすると血糖値は上昇しますが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きによって、血糖値は適切な範囲に保たれています。

インスリンは、細胞にブドウ糖を取り込むように促し、血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用したり、肝臓や筋肉に貯蔵したりする働きがあります。

しかし、糖尿病予備群や糖尿病の人は、インスリンの分泌量が不足していたり、インスリンが正常に働かなかったりする(インスリン抵抗性)ため、食後の血糖値が異常に高くなってしまうのです。

具体的な数値を見ていきましょう。空腹時の血糖値が100mg/dL未満であれば、正常範囲内とされています。100mg/dL以上126mg/dL未満の場合は「境界型」と呼ばれ、糖尿病予備群の可能性があります。そして、126mg/dL以上になると糖尿病と診断される可能性が高くなります。

糖尿病予備群は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高い状態です。しかし、生活習慣を改善することで、血糖値の上昇を抑え、糖尿病の発症を予防できる可能性があります。

診断された場合の次のステップ

糖尿病と診断された場合、まず最初に取り組むべきは、生活習慣の改善です。特に、食生活の見見直しと運動療法は、糖尿病治療の柱となる重要な要素です。

食事療法では、栄養バランスを意識し、摂取カロリーや糖質量をコントロールすることが大切です。具体的には、野菜を最初に食べたり、食物繊維を多く含む食品を選んだり、腹八分目を心がけたりするなどの工夫が効果的です。

また、適度な運動は、インスリンの働きを改善し、血糖値を下げる効果があります。激しい運動である必要はなく、ウォーキングなどの軽い運動を、日常生活の中で無理なく継続することが大切です。運動は、血糖値の改善効果だけでなく、ストレス解消や肥満予防、心肺機能の向上など、様々な健康効果も期待できます。

これらの生活習慣の改善を行っても血糖値が改善しない場合や、糖尿病の症状が重い場合には、薬物療法が検討されます。糖尿病の薬物療法には、大きく分けて経口血糖降下薬とインスリン注射の2種類があります。

経口血糖降下薬には、メトホルミン、SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など、様々な種類があります。医師は、患者さんの状態に合わせて、これらの薬剤を単独または組み合わせて処方します。

例えば、メトホルミンは、肝臓での糖新生を抑制することで血糖値を下げる薬です。SU薬は、すい臓からのインスリン分泌を促進することで血糖値を下げる薬です。DPP-4阻害薬は、インクレチンというホルモンを分解する酵素の働きを抑えることで、インスリン分泌を促進し、血糖値を下げる薬です。SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を抑制し、尿に糖を排出することで血糖値を下げる薬です。

インスリン注射は、インスリンというホルモンを体外から補うことで、血糖値を下げる治療法です。インスリン注射は、主にインスリンをほとんど分泌できない1型糖尿病の患者さんに使用されますが、経口血糖降下薬で十分な効果が得られない場合や、重症化した2型糖尿病の患者さんにも使用されることがあります。

糖尿病の治療薬は、近年目覚ましい進歩を遂げており、新しい薬剤も次々と開発されています。

例えば、2023年に発表された研究では、ベキサグリフロジンというSGLT2阻害薬が、メトホルミンと併用することで、2型糖尿病患者さんの血糖コントロールを有意に改善することが示されました。この研究では、ベキサグリフロジンを投与された患者さんグループは、プラセボ(偽薬)を投与された患者さんグループと比較して、HbA1cが有意に低下しました。また、ベキサグリフロジンは、体重減少や血圧の低下といった効果も認められました。

このように、糖尿病の治療法は日々進化しています。糖尿病と診断された場合でも、医師と相談しながら自分に合った治療法を選択することで、血糖値をコントロールし、合併症のリスクを抑えながら、充実した日常生活を送ることができます。

合併症のリスクと早期発見の重要性

糖尿病は、適切な治療を行わずに放置すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。高血糖の状態が続くと、血管の内壁が傷つき、動脈硬化が進行しやすくなってしまうのです。動脈硬化とは、血管が硬くもろくなる状態のことです。動脈硬化が進むと、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなったりするため、様々な病気を引き起こすリスクが高まります。

糖尿病の合併症は、大きく分けて「細小血管障害」と「大血管障害」の2種類に分類されます。

  1. 細小血管障害

    細小血管障害は、文字通り、細い血管に障害が起こる合併症です。具体的には、網膜症、腎症、神経障害などが挙げられます。

    • 網膜症: 目の奥にある網膜の血管が損傷を受け、視力低下や失明に至ることもあります。初期には自覚症状がない場合も多いですが、進行すると物が歪んで見えたり、視野が欠けたりするなどの症状が現れます。

    • 腎症: 腎臓にある糸球体という毛細血管が障害され、腎臓の働きが低下します。進行すると、人工透析が必要になることもあります。初期には自覚症状がほとんどありませんが、進行すると、むくみやだるさ、食欲不振などの症状が現れます。

    • 神経障害: 全身の神経が障害され、しびれや痛み、感覚異常などが現れます。特に、手足の末梢神経が障害されやすく、しびれや痛みを感じることが多いです。また、自律神経も障害されやすく、便秘や下痢、立ちくらみ、発汗異常などの症状が現れることもあります。

  2. 大血管障害

    大血管障害は、心臓や脳、足の血管など、太い血管に障害が起こる合併症です。具体的には、心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などが挙げられます。

    • 心筋梗塞: 心臓に栄養を送る冠動脈が動脈硬化によって狭窄・閉塞し、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。突然の激しい胸の痛みや圧迫感が特徴で、冷や汗、吐き気、嘔吐などを伴うこともあります。

    • 脳卒中: 脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞が損傷を受け、様々な神経障害を引き起こす病気です。突然の激しい頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害などの症状が現れます。

    • 閉塞性動脈硬化症: 足の血管が動脈硬化によって狭窄・閉塞し、足の血流が悪くなる病気です。歩行時にふくらはぎなどに痛みやしびれを感じ、安静にすると症状が改善するのが特徴です。

糖尿病の合併症は、一度発症してしまうと完治が難しい場合も多く、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させてしまいます。糖尿病の合併症を予防するためには、早期発見と適切な治療が何よりも重要です。

そのためにも、定期的な検査で血糖値やHbA1cをチェックし、医師の指示に従って適切な治療を継続していくことが重要です。糖尿病は、自覚症状が出にくい病気ですが、早期発見し、適切な治療を続けることで、合併症のリスクを大幅に減らし、健康寿命を延ばすことが期待できます。

糖尿病治療法と予後の見通し3つの側面

「糖尿病って診断されたけど、これからどうなるんだろう…」

そう不安に感じられる方もいるかもしれません。糖尿病は、決して他人事ではなく、現在、日本人の5人に1人が糖尿病またはその予備群と言われています。

しかし、悲観する必要はありません。糖尿病は、適切な治療と生活習慣の改善によって、健康な人と変わらない生活を送ることができます。むしろ、ご自身の健康状態と向き合う良い機会と捉え、前向きに取り組んでいきましょう。

生活習慣の改善とその効果

糖尿病の治療において、まず最初に取り組むべきは生活習慣の改善です。食事、運動、睡眠など、毎日の生活習慣を見直すことは、血糖値コントロールの第一歩と言えます。

食事療法: 健康的な食生活は、糖尿病管理の基盤となります。

  • バランスの取れた食事:

    「昨日はラーメンだけだったから、今日は野菜炒め定食にしようかな」

    外食が多い方でも、このような意識を持つことが大切です。主食、主菜、副菜をバランスよく食べることで、栄養の偏りを防ぎ、血糖値の急上昇を抑えることができます。

  • 糖質を控える:

    ご飯やパン、麺類などの炭水化物は、体内で分解されるとブドウ糖になり、血糖値を上昇させます。白米よりも玄米、うどんよりもそばなど、食物繊維が豊富な食品を選ぶと、血糖値の上昇が緩やかになります。また、甘いお菓子やジュースはなるべく控え、果物も食べ過ぎないように注意しましょう。

    以前、甘いものが大好きな患者さんがいらっしゃいました。そこで、私は「お菓子を食べる量を半分にして、その分、野菜スティックや無糖ヨーグルトを食べてみませんか?」と提案しました。すると、2か月後にはHbA1cが大きく改善し、体重も減少し、患者さんは驚きながらも喜んでいました。

  • よく噛んでゆっくり食べる:

    早食いは血糖値を急上昇させてしまうため、ゆっくりと時間をかけて食事を楽しみましょう。よく噛むことで満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止にもつながります。

運動療法: 適度な運動は、インスリン感受性を高め、血糖値を下げる効果があります。

  • 軽い運動を習慣に:

    激しい運動は逆効果になる場合もあるため、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。毎日のウォーキングや軽いストレッチ、ラジオ体操など、日常生活に取り入れやすい運動を習慣にすることが大切です。

    例えば、デスクワーク中心の方は、「1時間に1回は立ち上がってストレッチをする」「会議に行くときは階段を使う」など、こまめに体を動かすように心がけましょう。

  • 運動継続のコツ:

    運動を継続するためには、目標を立てたり、仲間を見つけたりするのも効果的です。

    先日、ウォーキングを始めた患者さんから、「景色が変わったり、季節を感じたりするのが楽しい」という声を聞きました。運動は、血糖値の改善効果だけでなく、ストレス解消や肥満予防、心肺機能の向上など、様々な健康効果も期待できます。

これらの生活習慣の改善は、ただ単に血糖値を下げるだけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の予防にも効果的です。

糖尿病治療薬の種類と選択ポイント

糖尿病の治療には、生活習慣の改善に加えて、薬物療法が行われることがあります。糖尿病の薬は、大きく分けて「経口血糖降下薬」と「インスリン注射」の2種類があります。

経口血糖降下薬: 飲み薬で、食後の血糖値の上昇を抑えたり、膵臓(すいぞう)からインスリンの分泌を促したりする効果があります。

  • SU薬:
    • インスリンの分泌を促進することで血糖値を下げる薬です。
    • 効果が高いため、血糖値が高い場合に有効ですが、低血糖を起こしやすいため注意が必要です。
    • 特に、高齢の方や食事が不規則になりやすい方は、低血糖のリスクが高まるため、注意が必要です。
  • DPP-4阻害薬:
    • インクレチンというホルモンを分解する酵素の働きを抑え、インスリン分泌を促進することで血糖値を下げます。
    • 低血糖を起こしにくいというメリットがあります。
  • SGLT2阻害薬:
    • 尿から糖を排出することで血糖値を下げます。
    • 尿の量が増えることがありますが、体重減少効果や心血管疾患の発症リスクを抑制する効果も期待できます。
    • 最近では、このSGLT2阻害薬が、心不全や慢性腎臓病といった病気に対しても効果があることが分かってきており、注目されています。

インスリン注射: インスリンというホルモンを注射で補うことで、血糖値をコントロールします。主に、インスリンをほとんど分泌できない1型糖尿病の患者さんに使用されますが、経口血糖降下薬で十分な効果が得られない場合や、重症化した2型糖尿病の患者さんにも使用されることがあります。

  • 超速効型: 食事をした直後に効果が出始め、短時間で効果が消えるため、食後高血糖の改善に適しています。
  • 持効型: ゆっくりと効果が現れ、長時間持続するため、基礎インスリンの補充に用いられます。

どの種類の薬が適切かは、患者さんの年齢、症状、生活習慣、他の病気の有無などを考慮して、医師が判断します。例えば、2型糖尿病の患者さんに対して、メトホルミンという経口血糖降下薬に加えて、ベキサグリフロジンというSGLT2阻害薬を併用することで、HbA1cを有意に低下させ、血糖コントロールを改善できるという研究結果が報告されています。

予後の違いと合併症予防のためにできること

糖尿病は、適切な治療と生活習慣の改善によって、健康な人と変わらない生活を送ることができます。しかし、治療を怠ったり、生活習慣を改善しなかったりすると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。

糖尿病の合併症には、大きく分けて「細小血管障害」と「大血管障害」の2種類があります。

  • 細小血管障害: 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害など、体の小さな血管に障害が起こる病気です。
  • 大血管症: 脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症など、体の大きな血管に障害が起こる病気です。

これらの合併症は、血糖値が高い状態が長く続くと発症しやすくなります。高血糖は、血管を傷つけ、動脈硬化を促進してしまうからです。動脈硬化とは、血管が硬くもろくなる状態のことで、血管が詰まりやすくなったり、破れやすくなったりするため、様々な病気を引き起こすリスクが高まります。

合併症を予防するためには、以下の3つのコントロールが重要です。

  1. 血糖コントロール: HbA1cの目標値を7%未満に保つことを目指します。HbA1cは過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する値であり、この値が低いほど、血糖値が良好にコントロールされていると言えます。

    例えば、HbA1cが8%の方は、7%に近づけるだけでも、合併症のリスクを significantly 減らすことができます。

  2. 血圧コントロール: 高血圧は血管に負担をかけるため、目標値である130/80mmHg未満を目指します。

  3. 脂質コントロール: 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を低く抑え、善玉コレステロール(HDLコレステロール)値を高く保つようにします。

糖尿病は、早期発見・早期治療によって、合併症のリスクを大幅に減らすことができます。検診で血糖値が高いと指摘された場合や、糖尿病の症状が気になる場合は、放置せずに、医療機関を受診しましょう。

まとめ

検診で血糖値が高いと指摘された場合、糖尿病の可能性があります。糖尿病は、放置すると様々な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な治療が大切です。糖尿病の診断には、空腹時血糖値、75g経口ブドウ糖負荷試験、HbA1cなどの検査項目が用いられます。これらの検査項目で基準値を超えた場合は、糖尿病と診断される可能性があります。糖尿病と診断された場合は、生活習慣の改善、薬物療法など、医師の指示に従って適切な治療を行いましょう。適切な治療と生活習慣の改善によって、糖尿病はコントロールでき、健康な人と変わらない生活を送ることができます。

全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。

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令和6年8月20日 天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣

・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
・がん治療認定医

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参考文献

  1. Halvorsen YD, Conery AL, Lock JP, Zhou W, Freeman MW. Bexagliflozin as an adjunct to metformin for the treatment of type 2 diabetes in adults: A 24-week, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Diabetes, obesity & metabolism 25, no. 10 (2023): 2954-2962.

追加情報

[title]: Bexagliflozin as an adjunct to metformin for the treatment of type 2 diabetes in adults: A 24-week, randomized, double-blind, placebo-controlled trial.,

成人2型糖尿病患者に対するメトホルミン併用療法におけるベキサグリフロジン:24週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験

【要約】

  • 本研究は、成人2型糖尿病患者におけるメトホルミン併用療法におけるベキサグリフロジンの安全性と有効性を評価したランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。

  • 317人の参加者を、ベキサグリフロジン群とプラセボ群にランダムに割り当て、メトホルミンを併用した。

  • 主要評価項目は、ベースラインから24週までのグリコヘモグロビン(HbA1c)の変化であり、副次評価項目は収縮期血圧(SBP)、空腹時血糖、体重減少であった。

  • HbA1cが10.5%を超える参加者を対象としたオープンラベル群が別に設定され、別途解析された。

  • ベキサグリフロジン群のHbA1cの平均変化は-1.09%(95%CI -1.24%、-0.94%)、プラセボ群は-0.56%(-0.71%、-0.41%)であり、両群間の差は-0.53%(-0.74%、-0.32%;p<0.0001)であった。

  • 救済薬投与後の観察値を除外すると、群間差は-0.70%(-0.92、-0.48;p<0.0001)であった。

  • オープンラベル群のHbA1cの変化は-2.82%(-3.23%、-2.41%)であった。

  • ベースラインからのSBP、空腹時血糖、体重のプラセボ調整済み変化は、それぞれ-7.07 mmHg(-9.83、-4.32;p<0.0001)、-1.35 mmol/L(-1.83、-0.86;p<0.0001)、-2.51 kg(-3.45、-1.57;p<0.0001)であった。

  • ベキサグリフロジン群とプラセボ群では、それぞれ42.4%と47.2%の被験者に有害事象が認められたが、ベキサグリフロジン群では重篤な有害事象を経験した被験者の割合が少なかった。

  • ベキサグリフロジンは、糖尿病を有する成人集団において、メトホルミンに追加した場合、血糖コントロール、推定糸球体濾過量、SBPにおいて臨床的に有意な改善をもたらした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37409573,

[quote_source]: Halvorsen YD, Conery AL, Lock JP, Zhou W and Freeman MW. “Bexagliflozin as an adjunct to metformin for the treatment of type 2 diabetes in adults: A 24-week, randomized, double-blind, placebo-controlled trial.” Diabetes, obesity & metabolism 25, no. 10 (2023): 2954-2962.