ブログ

貧血っぽい。まずは内科にいってください!原因は?

「貧血気味かも…」と感じていませんか? 慢性的な倦怠感や疲労感、動悸、息切れ、めまい、顔面蒼白、頭痛、食欲不振、集中力の低下、イライラ…これらはすべて貧血のサインかもしれません。

実は、貧血は「血が足りない状態」という漠然とした認識を超え、様々な種類と原因が存在します。例えば、最も一般的な鉄欠乏性貧血は、慢性出血や鉄分摂取不足だけでなく、2023年の研究では膠原性胃炎との関連性も指摘されています。

さらに、ビタミンB12や葉酸の不足、骨髄の機能不全、赤血球の破壊亢進など、貧血の種類によって原因は多岐に渡ります。

この記事では、貧血の主な原因3つと種類、具体的な症状、そして検査方法や治療法まで、小学生でもわかるように丁寧に解説します。もしかしたら、あなたが今抱えている不調の鍵が、この記事で見つかるかもしれません。

【この記事の著者のご紹介】
みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
内視鏡といえば天白橋。内科もやっぱり天白橋。天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。

https://tenpakubashi-cl.com/staff/

尚、スタッフ募集中です。

https://tenpakubashi-cl.jbplt.jp/

クリニックの院長グッズ販売中→こちら

貧血の主な原因3つと種類

「貧血」と聞くと、なんとなく「血が足りない状態」というのはイメージできますよね。実際、診察室でも「貧血気味って言われたんですけど…」と来院される患者さんは多くいらっしゃいます。

しかし、貧血にも様々な種類があり、その原因も様々です。今回は、主な原因と種類について、小学生でもわかるように、そして、ご自身の身体のこととして理解を深めていただけるよう、具体的な例を交えながら説明します。

鉄欠乏性貧血:最も一般的な貧血

鉄欠乏性貧血は、読んで字のごとく、体の中の鉄分が不足することで起こる貧血です。鉄分は、血液中の赤血球を作るのに欠かせない栄養素です。

鉄分が不足すると、体の中で酸素を運ぶ赤血球がうまく作れなくなり、全身に酸素が行き渡らなくなってしまうのです。

鉄欠乏性貧血で最も多い原因は、慢性出血と鉄分の摂取不足です。

慢性出血とは、出血自体は少量でも、長期間にわたって出血が続く状態のことです。例えば、胃や腸からの出血、月経時の過多月経などが挙げられます。

これらは自覚症状がない場合もあり、知らないうちに貧血が進行しているケースも少なくありません。私自身も、健康診断で便潜血陽性が見つかり、精密検査の結果、早期の大腸がんが発見された患者さんを何人も診てきました。

また、思春期の女の子や妊娠中の女性は、体の成長やお腹の赤ちゃんの発育のために、多くの鉄分を必要とします。そのため、意識して鉄分を多く含む食品を摂らないと、貧血になりやすいのです。

さらに、2023年に発表された研究では、鉄欠乏性貧血の患者さんの約6割に胃の不調が見られるという結果が出ています。これは、胃の粘膜に炎症が起こり、そこから少量の出血が長期間続くことで鉄欠乏性貧血につながる膠原性胃炎の可能性を示唆しています。

膠原性胃炎は、胃の粘膜の下にコラーゲンという線維が増えてしまう病気です。コラーゲンは、皮膚や骨、腱などを構成するタンパク質の一種ですが、これが胃の粘膜に異常に蓄積すると、胃の粘膜が硬くなり、炎症を起こしやすくなります。

この炎症によって胃の粘膜が傷つき、そこから少量の出血が続くことで、鉄欠乏性貧血につながるのです。膠原性胃炎は比較的まれな病気ですが、貧血の原因として見逃されることも少なくありません。

巨赤芽球性貧菜:ビタミンB12や葉酸の不足

巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12や葉酸が不足することで起こる貧血です。ビタミンB12と葉酸は、鉄分と同じく、赤血球を作るのに欠かせない栄養素です。これらのビタミンが不足すると、赤血球がうまく作れなくなり、貧血になってしまいます。

ビタミンB12は、主に肉や魚、卵、乳製品などの動物性食品に含まれています。そのため、完全菜食主義の方や、胃の働きが弱っている高齢者の方などは、ビタミンB12が不足しやすいため注意が必要です。

実際に、長年菜食主義を続けていた方が、重度の貧血で来院されたケースを経験したことがあります。

葉酸は、ほうれん草などの緑黄色野菜や果物、レバーなどに多く含まれています。

妊娠初期の女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、葉酸を積極的に摂取することが推奨されています。

再生不良性貧血:骨髄の機能不全

再生不良性貧血は、骨髄の機能が低下することで起こる貧血です。骨髄とは、骨の中にあるスポンジ状の組織で、ここで血液中の赤血球、白血球、血小板など、血液の細胞成分が作られています。

骨髄の機能が低下すると、これらの血液細胞が十分に作れなくなり、貧血だけでなく、感染症にかかりやすくなったり、出血が止まりにくくなったりするなどの症状が現れることもあります。

溶血性貧血:赤血球の破壊亢進

溶血性貧血は、赤血球が壊れやすくなることで起こる貧血です。通常、赤血球の寿命は約120日ですが、溶血性貧血では、赤血球が寿命よりも早く壊れてしまいます。

その原因は、遺伝的なものや、免疫の異常、薬の副作用など、様々です。

その他の貧血:慢性疾患に伴う貧血など

その他にも、慢性腎臓病や慢性炎症性疾患などの慢性疾患に伴って貧血が起こることがあります。これらの貧血は、慢性疾患による炎症が原因で、赤血球の生産が抑制されたり、赤血球の寿命が短くなったりすることで起こります。

少しでも気になる症状があれば、自己判断せずに、お近くの医療機関に相談するようにしてください。

貧血の症状と日常生活への影響

「貧血」と聞くと、なんとなく「血が足りない状態」というのはイメージできますよね。実際、診察室でも「貧血気味って言われたんですけど…」と来院される患者さんは多くいらっしゃいます。

しかし、貧血の症状は実に多様で、そのサインを見逃してしまう方も少なくありません。今回は、貧血になるとどんな症状が出て、日常生活にどんな影響があるのか、具体的に見ていきましょう。もしかしたら、今あなたが感じている不調も、貧血が原因かもしれません。

倦怠感や疲労感:常に疲れている

貧血になると、体中に酸素を運ぶ赤血球が不足するため、全身が酸素不足の状態になります。酸素は、私たちが活動するためのエネルギーを作るのに必要不可欠です。酸素が足りないと、エネルギーがうまく作れず、常に疲れている、だるい、といった倦怠感や疲労感を感じやすくなります。

例えば、いつもなら簡単に登れる階段なのに、息切れがして途中で休まなければいけない、朝起きても体が重くてなかなか動けない、仕事に集中できずミスが増える、といった症状が現れることがあります。20代女性の患者さんで、慢性的な疲労感で来院された方がいらっしゃいました。最初は倦怠感と微熱が主な症状でしたが、問診と血液検査の結果、鉄欠乏性貧血と診断しました。鉄剤を処方し、食生活の指導も行ったところ、数週間後には症状が改善し、以前のように仕事に集中できるようになったと喜んでいらっしゃいました。

これらの症状は、風邪などの他の病気でも起こることがあります。しかし、風邪でもないのに慢性的に疲れを感じている場合は、貧血の可能性も考えてみましょう。

動悸や息切れ:少し動くと息が上がる

貧血になると、体内の酸素不足を補うために、心臓が一生懸命に血液を送り出そうとします。そのため、心臓がドキドキと速く鼓動する動悸や、少し動いただけでも息苦しくなる息切れといった症状が現れやすくなります。

例えば、いつもより速く歩いたり、階段を少し登ったりしただけで、心臓がバクバクしたり、息苦しくなったりすることがあります。まるで激しい運動をした後のような息切れを感じ、日常生活に支障をきたすこともあります。高齢の男性の患者さんで、息切れがひどくて来院された方がいらっしゃいました。検査の結果、重度の貧血と診断され、緊急で輸血を行いました。貧血が進行すると、心臓に大きな負担がかかり、心不全などの深刻な合併症を引き起こす可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。

めまい:立ちくらみがする

貧血によって脳に十分な酸素が供給されなくなると、立ちくらみやめまいといった症状が起こることがあります。これは、急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になったり、ふらふらしたりするような感覚です。

例えば、椅子から急に立ち上がったときや、朝ベッドから起き上がったときに、目の前がクラッとして倒れそうになる、といった経験はありませんか? あるいは、電車内で気分が悪くなり、途中下車してしまった、という経験はありませんか?このような症状が頻繁に起こる場合は、貧血が原因である可能性があります。

顔面蒼白:顔色が悪い

健康な人の場合、血液中の赤血球によって皮膚や粘膜に赤みが与えられます。しかし、貧血になると赤血球が不足するため、顔色が青白くなったり、唇や爪の色が悪くなったりします。周りの人から「顔色が悪いね」と言われるようになったら、貧血のサインかもしれません。

例えば、鏡を見て、いつもより顔色が白っぽい、唇の色が薄い、爪の色が白っぽい、と感じたら、貧血の可能性を疑ってみましょう。特に、目の下の粘膜や手のひらの色が白っぽくなっていないか、チェックしてみてください。

頭痛:慢性的な頭痛

貧血によって脳への酸素供給が不足すると、慢性的な頭痛を引き起こすことがあります。ズキズキとした痛みや、頭が重く感じるような鈍い痛みなど、痛みの種類はさまざまです。Kozaiらの研究(2023)では、貧血の患者さんの約6割に腹痛が見られるという報告があります。

例えば、緊張型頭痛や片頭痛持ちの方でも、貧血になると頭痛の頻度や痛みの強さが増すことがあります。あるいは、これまで頭痛持ちでなかったのに、最近頭痛がするようになったという場合も、貧血が原因かもしれません。なかなか治らない頭痛に悩まされている場合は、貧血の可能性も考えてみましょう。

食欲不振:食欲がわかない

貧血になると、胃腸の働きも悪くなり、食欲不振や吐き気といった症状が現れることがあります。特に、鉄欠乏性貧血の場合、氷や土などを食べたくなる異食症が起こることもあります。

例えば、以前は美味しくご飯を食べていたのに、最近は何を食べても美味しくない、食事の量が減った、特定の食べ物が無性に食べたくなる、といった変化があれば、貧血のサインかもしれません。

集中力の低下:仕事や勉強に集中できない

貧血になると、脳に十分な酸素が供給されなくなるため、集中力の低下や記憶力の低下といった症状が現れやすくなります。仕事や勉強に集中できず、ミスが増えたり、能率が落ちたりすることがあります。

例えば、会議中に集中力が途切れてしまう、簡単な計算ミスが増えた、人の名前が思い出せない、新しいことを覚えるのが難しくなった、といった症状が現れたら、貧血の可能性も考えてみましょう。

イライラしやすくなる:些細なことで怒りっぽくなる

貧血になると、些細なことでイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりすることがあります。これは、脳の酸素不足によって自律神経のバランスが崩れることが原因と考えられています。

例えば、いつもは気にならないようなことでも、すぐにカッとなってしまう、感情のコントロールが難しくなった、些細なことで涙が出てしまう、といった変化に気づいたら、貧血が原因かもしれません。

膠原性胃炎のようなまれな疾患でも貧血の症状が現れることがあります。貧血の症状は多岐にわたり、また他の疾患と共通する症状も多いです。自己判断せずに、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。

貧血の検査と治療法

「貧血気味かも…」と感じたら、まずは病院で検査を受けることが大切です。

なんとなくだるい、疲れやすい、といった症状は、貧血以外の原因でも起こり得るため、自己判断は危険です。

この記事では、貧血の検査方法と治療法について、小学生でも理解できるように、具体的な例を交えながらわかりやすく説明します。

どんな検査をするの?治療はどうなるの?と不安に思っている方も、この記事を読めば、検査や治療の流れがイメージできるはずです。安心して受診してくださいね。

血液検査:貧血の診断に必須

貧血の検査で最も重要なのは血液検査です。血液検査では、赤血球の数やヘモグロビンの量、赤血球の大きさなどを調べ、貧血の有無や種類、重症度を判断します。

採血は、注射器を使って腕の静脈から少量の血液を採取します。チクッとする程度で、通常はそれほど痛みはありません。

まれに、採血後に内出血を起こすことがありますが、数日で自然に消えることがほとんどです。

血液検査の結果は、通常1週間程度でわかります。検査項目は医療機関によって多少異なりますが、主な検査項目は以下の通りです。

  • ヘモグロビン(Hb): 赤血球に含まれるタンパク質で、酸素を全身に運ぶ役割を担っています。ヘモグロビン値が低いと貧血と診断されます。健康な成人の場合、男性で13.0g/dL以上、女性で12.0g/dL以上が正常値とされています。

  • ヘマトクリット(Ht): 血液全体に占める赤血球の割合を示します。ヘマトクリット値も貧血の診断に用いられます。

  • 赤血球数(RBC): 血液中の赤血球の数です。

  • MCV、MCH、MCHC: これらの数値は赤血球の大きさとヘモグロビン量を表し、貧血の種類を特定するのに役立ちます。例えば、MCVが低い場合は鉄欠乏性貧血の可能性が高いと考えられます。MCVが高い場合は、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血の可能性が考えられます。

  • 網赤血球数: 骨髄で作られる新しい赤血球の数です。網赤血球数が少ない場合は、再生不良性貧血などの骨髄の機能が低下している貧血の可能性が考えられます。

Kozaiらの2023年の研究では、膠原性胃炎のような比較的まれな疾患でも貧血が重要な症状の一つであり、初期症状では診断が遅れがちであることが報告されています。膠原性胃炎とは、胃の粘膜の下にコラーゲンという線維が増えてしまう病気で、これにより胃の粘膜が硬くなり、炎症や出血を起こしやすくなります。その結果、鉄欠乏性貧血につながることがあります。膠原性胃炎は比較的まれな病気ですが、他の消化器疾患と誤診されることもあり、診断が難しい場合があります。

血液検査である程度貧血の種類を絞り込むことができますが、確定診断には、胃カメラ検査などの精密検査が必要となる場合もあります。

鉄剤の内服:鉄欠乏性貧血の治療

鉄欠乏性貧血と診断された場合、最も一般的な治療法は鉄剤の内服です。鉄剤には、錠剤、カプセル、シロップなど様々な種類があり、患者さんの年齢や状態に合わせて処方されます。食後に服用することで、胃への負担を軽減できます。

鉄剤を服用すると、吐き気、便秘、下痢、腹痛などの副作用が現れることがあります。副作用が強い場合は、医師に相談しましょう。鉄剤の効果を高めるためには、ビタミンCを多く含む食品やサプリメントを一緒に摂取すると良いでしょう。ビタミンCは鉄の吸収を促進する作用があります。

鉄剤の内服で効果が不十分な場合や、副作用が強い場合は、鉄剤の注射による治療を行うこともあります。注射による治療は、内服よりも速やかに鉄分を補給できるというメリットがあります。

ビタミン注射:ビタミンB12や葉酸の補充

巨赤芽球性貧血の場合は、不足しているビタミンB12や葉酸の注射を行います。ビタミンB12や葉酸は、赤血球の生成に不可欠な栄養素です。注射は、通常週に1回程度行います。

輸血:重症貧血の場合

貧血が重症の場合や、心臓や呼吸器に負担がかかっている場合は、輸血が必要になることがあります。輸血は、点滴のように血管に血液を注入する方法で行います。輸血を行うことで、不足している赤血球を迅速に補給し、症状を改善することができます。

食生活の改善:バランスの取れた食事

貧血の予防や治療には、バランスの取れた食事が重要です。鉄分、ビタミンB12、葉酸、タンパク質などを積極的に摂取しましょう。

  • 鉄分を多く含む食品: レバー、ひじき、ほうれん草、赤身の肉、魚介類など

  • ビタミンB12を多く含む食品: 肉類、魚介類、卵、乳製品など

  • 葉酸を多く含む食品: ほうれん草、ブロッコリー、いちご、レバーなど

食事だけで十分な栄養を摂取することが難しい場合は、医師や薬剤師に相談の上、サプリメントの利用も検討できます。しかし、サプリメントはあくまでも補助的なものであり、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。

天白橋内科内視鏡クリニックでの貧血検査・治療

当クリニックでは、血液検査、胃カメラ、大腸内視鏡検査をはじめ、貧血の診断に必要な検査を行っています。また、貧血の種類や重症度に応じて、適切な治療を提供しています。貧血かな?と思ったら、お気軽にご相談ください。

アクセス方法:名古屋市営地下鉄鶴舞線「原駅」より徒歩2分

当クリニックは、名古屋市営地下鉄鶴舞線「原駅」2番出口より徒歩2分の場所にあります。

診療時間・休診日

休診日は、木曜日、日曜、祝日です。

まとめ

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態です。主な原因は、鉄欠乏、ビタミンB12・葉酸欠乏、骨髄機能不全、赤血球破壊亢進などです。

症状は、倦怠感、動悸・息切れ、めまい、顔面蒼白、頭痛、食欲不振、集中力低下、イライラなど多様です。

検査は血液検査が中心で、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、赤血球数などを調べます。治療は原因別に、鉄剤内服、ビタミン注射、輸血などを行います。

食生活の改善も重要で、鉄分、ビタミンB12、葉酸などを含む食品を積極的に摂りましょう。

全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。

詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。


 

令和6年11月26日 

天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣

・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医

 

参考文献

  • Kozai L, Tan A, Nebrejas KE, Warashina C and Nishimura Y. “Collagenous Gastritis Is an Underdiagnosed Cause of Anemia and Abdominal Pain: Systematic Scoping Review.” Digestive diseases and sciences 68, no. 7 (2023): 3103-3114.

追加情報

膠原性胃炎は貧血や腹痛の原因として診断が遅れがち:システマティックスコーピングレビュー

【要約】

  • 背景 膠原性胃炎(CG)は、単核細胞による小腸粘膜の浸潤と上皮下膠原線維沈着を特徴とするまれな疾患であり、非特異的な症状のため診断が誤解されることがよくある。CGの臨床的特徴や内視鏡検査・病理学的特徴、治療成績はまだ十分に定義されていない。

  • 目的 CGに関する既存のエビデンスを要約することを目的とする。

  • 方法 PRISMA Extension for Scoping Reviewsに則り、MEDLINEおよびEMBASEで「collagenous gastritis」と「microscopic gastritis」をキーワードに検索を実施した。

  • 結果 最終的には9件の観察研究と67件の症例報告が含まれた76件の論文が分析の対象となり、86例の膠原性胃炎が見出された。最も一般的な症状は貧血(61.4%)、その後に腹部不快感(60.5%)、下痢(25.3%)、吐き気/嘔吐(23.0%)であった。内視鏡検査では60.2%が胃の結節を呈したが、紅斑または瘢痕(26.1%)、正常所見(12.5%)も多かった。病理学的所見では65.9%が上皮下膠原帯の発現を示し、37.5%が粘膜炎症浸潤を有していた。一般的に行われる治療法は鉄剤の投与(42%)、PPIの投与(30.7%)、プレドニゾロンの投与(9.1%)、ブデソニドの投与(6.8%)で、64.2%で臨床的改善が認められた。

  • 結論 このシステマティックレビューはCGの臨床的特徴をまとめたものである。この疾患の明確な診断基準の確立や、有効な治療法の特定を目的としたさらなる研究が必要である。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37022603

,

[quote_source]: Kozai L, Tan A, Nebrejas KE, Warashina C and Nishimura Y. “Collagenous Gastritis Is an Underdiagnosed Cause of Anemia and Abdominal Pain: Systematic Scoping Review.” Digestive diseases and sciences 68, no. 7 (2023): 3103-3114.