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健康診断で「コレステロールが高い」と指摘されたことはありませんか? 実はコレステロール値の異常、つまり「高脂血症」は、自覚症状がないまま進行し、心臓病や脳卒中を引き起こす可能性もある、恐ろしい病気なのです。
高脂血症は、血管の老化現象とも例えられます。放置すると、まるで水道管に油汚れが溜まっていくように、血管が硬く狭くなっていく「動脈硬化」を引き起こし、様々な病気を招く危険性があります。
この記事では、高脂血症が引き起こす体の変化、そして放置することの危険性について詳しく解説していきます。 さらに、高脂血症を改善するための生活習慣改善策についてもご紹介します。ご自身の体と向き合い、健康的な未来を守るための第一歩を踏み出しましょう。
目次
あなたの体は大丈夫?高脂血症を理解する3つのポイント
健康診断で「コレステロールが高い」と言われたことはありませんか?「高脂血症」は、まさに血管の老化現象。自覚症状がないまま進行し、心臓病や脳卒中を引き起こす怖い病気です。今回は、高脂血症の基礎知識、そして、それが私たちの体に及ぼす影響について、わかりやすく解説します。
高脂血症とは?
高脂血症とは、血液中にコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態のことです。 これは、まるで血管という道路に、コレステロールや中性脂肪という車が溢れかえって大渋滞しているような状態です。車がスムーズに走れなくなるように、血液の流れも悪くなり、様々な体の不調につながります。
コレステロールの役割と種類
コレステロールは、細胞膜やホルモンを作るために必要不可欠な物質です。 私たちの体は、家を作るためにレンガが必要なのと同じように、コレステロールを使って健康な体を維持しています。
コレステロールには、大きく分けて2つの種類があります。
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール): 血管の壁にコレステロールを溜め込んでしまう、いわば「血管の悪者」です。LDLコレステロールが増えすぎると、血管が狭くなってしまい、動脈硬化を引き起こしやすくなります。これは、まるで血管という水道管に脂肪がこびりついて、水の流れが悪くなってしまうイメージです。
- HDLコレステロール(善玉コレステロール): 血管の壁に溜まったコレステロールを回収して、肝臓に運んでくれる、いわば「血管のお掃除屋さん」です。HDLコレステロールは、動脈硬化を防ぐ役割があります。
これらのコレステロールのバランスが大切で、LDLコレステロール値が高く、HDLコレステロール値が低いと、動脈硬化のリスクが高まります。
高脂血症の原因と症状
高脂血症の原因は、遺伝的な要因、食生活の乱れ、運動不足、肥満、喫煙、ストレスなど、実に様々です。 例えば、毎日ラーメンや揚げ物ばかり食べている人、運動不足でデスクワーク中心の生活を送っている人は、高脂血症のリスクが高いと言えるでしょう。また、閉経後の女性では、女性ホルモンの減少により脂質代謝が変化し、LDLコレステロール値が上昇しやすくなるという研究結果も報告されています。
高脂血症は、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、「自分は大丈夫」と思ってしまいがちですが、気づかないうちに進行しているケースが多いのです。 これは、まるで静かに進行するサイレントキラーのようです。高脂血症が進行すると、動脈硬化が進んでしまい、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすリスクが高まります。動脈硬化が進行すると、息切れや胸の痛み、手足のしびれなどの症状が現れることもあります。
放置するとどうなる?高脂血症の危険性
「健康診断でコレステロールが高いと言われたけど、自覚症状もないし、別に大丈夫でしょ?」
そう思っていませんか?
私も医師になる前は、そう思っていました。しかし、医師として働き始めてから、高脂血症を放置することの恐ろしさを目の当たりにしてきました。
高脂血症は、まさに「静かなる時限爆弾」です。自覚症状がないまま進行し、ある日突然、心臓や脳に重大な病気を引き起こす可能性があります。
動脈硬化のリスク
高脂血症を放置すると、体の中で何が起こるのでしょうか?
高脂血症によって血液中の悪玉コレステロールが増えすぎると、血管の内側にコレステロールが溜まり始めます。これは、まるで水道管の内側に油汚れがこびりついていくイメージです。最初は少しの汚れでも、時間が経つにつれてどんどん蓄積し、水道管の中が狭くなってしまいますよね? 血管でも同じことが起こります。
この血管の内側にコレステロールなどが蓄積し、血管が硬く狭くなっていく状態を「動脈硬化」と言います。動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、様々な臓器に十分な酸素や栄養を届けられなくなります。
例えば、私のクリニックには、動脈硬化が原因で足の血管が狭くなり、歩くと足が痛くなる「閉塞性動脈硬化症」の患者さんが多くいらっしゃいます。中には、血管が詰まってしまい、足の指が壊死してしまう方もいます。
心筋梗塞のリスク
心臓は、毎日休むことなく、全身に血液を送り出すという重要な役割を担っています。この心臓に栄養や酸素を送り届けているのが冠動脈という血管ですが、この冠動脈で動脈硬化が起きると、心筋梗塞のリスクが急上昇します。
心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養や酸素を供給する冠動脈が詰まってしまい、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。突然の激しい胸の痛みや息苦しさ、冷や汗、吐き気などの症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。
先日も、40代の男性が、胸の痛みを訴えて救急搬送されてきました。検査の結果、心筋梗塞と判明。幸い、すぐにカテーテル治療を行えたため、一命は取り留めましたが、もう少し遅かったら、命を落としていたかもしれません。実は、この男性、健康診断でコレステロール値が高いと指摘されていたものの、自覚症状がないため、放置していたそうです。
脳卒中のリスク
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳細胞が壊れてしまう病気です。脳卒中は、突然に発症し、半身まひや言語障害、意識障害などの重い後遺症が残ることが多く、生活の質を大きく低下させてしまいます。
高脂血症は、脳卒中、特に脳梗塞のリスクを高めることが知られています。脳の血管は非常に細いため、動脈硬化によって血管が狭くなると、血液が流れにくくなり、脳梗塞を起こしやすくなります。
私の祖母も、高脂血症を放置したために脳梗塞を発症し、半身まひになってしまいました。以前は、毎日元気に畑仕事をしていましたが、脳梗塞を発症してからは、車椅子での生活を余儀なくされています。
閉経後の女性では、女性ホルモンの減少により脂質代謝が変化し、LDLコレステロール値が上昇しやすくなるという研究結果も報告されており、特に注意が必要です。
高脂血症を改善するための生活習慣
健康診断でコレステロール値が高めと指摘されると、不安になりますよね。特に自覚症状がない場合は、「自分は大丈夫」と楽観視してしまいがちです。しかし、高脂血症はまさに「静かなる時限爆弾」とも呼ばれ、放置すると動脈硬化のリスクを高め、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
私のクリニックにも、健康診断で異常を指摘されたにも関わらず、放置していたために、手遅れになってしまった患者さんを数多く見てきました。
例えば、50代の男性会社員の方。毎日忙しく働き、食事も外食中心で、運動不足が続いていました。健康診断でコレステロール値が高いと指摘されていましたが、自覚症状がなかったため、そのまま放置していました。しかし、ある日突然、激しい胸の痛みに襲われ、病院に搬送されました。診断結果は、急性心筋梗塞。幸い一命は取り留めましたが、その後は仕事復帰も難しく、以前のような生活を送ることができなくなってしまいました。
このようなケースは決して他人事ではありません。高脂血症は、生活習慣の改善によって予防・改善できる病気です。
そこで、今回は高脂血症を改善するための生活習慣について、食事療法、運動療法、薬物療法の3つの観点から詳しく解説していきます。
食事療法:コレステロールを下げる食事
食事は、毎日のことなので、高脂血症の改善に大きく関わってきます。毎日の食事を少しだけ工夫することで、体の中からも健康を目指しましょう。
1. 脂質の量と質を見直す
脂質は、私たちの体にとって必要な栄養素ですが、摂りすぎると、血液中のコレステロール値を上昇させてしまうことがあります。
脂質には大きく分けて、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、コレステロールの3種類があります。
- 飽和脂肪酸: LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、動脈硬化を促進する可能性があります。主に動物性脂肪に多く含まれています。
- 例:牛肉や豚肉の脂身、バター、ラード、ベーコン、ソーセージ
- 不飽和脂肪酸: 動脈硬化を予防する効果が期待されています。
- n-6系脂肪酸: LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす一方、過剰に摂取するとHDLコレステロール(善玉コレステロール)も減らす可能性があります。
- 例:コーン油、大豆油、サラダ油
- n-3系脂肪酸: 中性脂肪を減らし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす効果が期待できます。
- 例:マグロ、イワシ、サバ、サンマなどの青魚、アマニ油、エゴマ油
- n-6系脂肪酸: LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減らす一方、過剰に摂取するとHDLコレステロール(善玉コレステロール)も減らす可能性があります。
- コレステロール: 体内で合成されるため、食事からの摂取を控えることで、体内のコレステロール量を調整できます。
- 例:卵黄、魚卵、レバー、イカ、エビ
2. コレステロールを下げる食品を積極的に摂る
食物繊維は、コレステロールの吸収を抑えたり、排泄を促したりする働きがあります。野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなど、食物繊維が豊富な食品を積極的に食べるように心がけましょう。
例えば、私のクリニックでは、患者さんに食物繊維を効率よく摂取するため、野菜スープを毎食前に飲むことをおすすめしています。野菜スープを最初に食べることで、血糖値の上昇を抑え、コレステロールの吸収も穏やかになると考えられています。
3. 食生活のポイント
食事療法は、ただ闇雲に制限すれば良いというものではありません。毎日の食事の中で、以下のポイントを意識することで、無理なく継続することができます。
ポイント | 具体例 |
---|---|
主食は、白米よりも玄米や雑穀米などを選ぶ | 白米に比べて食物繊維が豊富なので、血糖値の上昇を抑えられます。 |
汁物は、具だくさんにする | 野菜などをたっぷり摂ることができ、満腹感も得られます。 |
肉料理を選ぶ際は、脂身の少ない部位を選ぶ | ヒレ肉や鶏のささみなどは、脂質が少なく、良質なタンパク質を摂取できます。 |
揚げ物は、週に1~2回程度に控える | 油の吸収を抑え、余分なカロリー摂取を防ぎます。 |
お菓子やジュース類は、できるだけ控える | 糖分の摂りすぎは、中性脂肪を増やし、肥満の原因にもなります。 |
運動療法:効果的な運動方法
運動は、血液中のコレステロール値を改善するだけでなく、ストレス解消や体力向上にも効果があります。高脂血症の改善には、激しい運動ではなく、軽度から中等度の運動を、無理なく継続することが大切です。
1. 毎日続けることを目標にする
「運動は、毎日するべきもの」と頭では分かっていても、なかなか継続するのが難しいですよね。そこで、まずは「1日5分だけ」でも良いので、毎日続けることを目標にしてみましょう。
例えば、テレビを見ながらスクワットをしたり、歯磨きしながらストレッチをするなど、日常生活の中に「ちょこっと運動」を取り入れてみましょう。
2. 軽度から中等度の運動を選ぶ
運動の強度は、「息が少し上がる程度」を目安にしましょう。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、水泳などがおすすめです。
運動不足の人は、急に激しい運動をすると、体に負担がかかってしまい、怪我をしてしまう可能性もあります。
3. 無理なくできる範囲で始める
最初は、10分程度から始めて、徐々に時間を延ばしていくと良いでしょう。運動を習慣化することで、心身ともにリフレッシュできます。
薬物療法:治療薬の種類と効果
食事療法や運動療法を行っても、コレステロール値が十分に改善しない場合は、医師の判断により、薬物療法が検討されることがあります。薬物療法は、高脂血症の改善だけでなく、動脈硬化の予防にも効果が期待できます。
閉経後の女性では、女性ホルモンの減少により脂質代謝が変化し、LDLコレステロール値が上昇しやすくなるという研究結果も報告されており、特に注意が必要です。
高脂血症の治療薬には、様々な種類がありますが、大きく分けると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる薬と、中性脂肪を低下させる薬があります。医師は、患者さんの状態に合わせて、適切な薬を処方します。服薬中は、定期的に医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
まとめ
高脂血症は血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態で、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高める。
高脂血症は自覚症状がないまま進行することが多く、放置すると血管が詰まり、重大な病気を引き起こす可能性がある。
改善には、脂質の量と質を見直した食事療法、軽度から中等度の運動を継続する運動療法、医師の診断による薬物療法などがある。
全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。
令和6年8月21日 天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
・がん治療認定医
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参考文献
- Li H, Sun R, Chen Q, Guo Q, Wang J, Lu L, Zhang Y. Association between HDL-C levels and menopause: a meta-analysis. Hormones (Athens, Greece) 20, no. 1 (2021): 49-59.
追加情報
[title]: Association between HDL-C levels and menopause: a meta-analysis.,
閉経とHDL-Cレベルの関連性:メタ分析
【要約】
閉経は女性の脂質プロファイルに影響を与えるが、閉経後女性で高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)レベルが低下するかどうかは不明なままであり、本研究では系統的レビューとメタ分析を実施した。
PubMed、EMBASE、Cochrane Library、Web of Scienceデータベースを検索し、1987年から2020年に発表された498件の論文を収集した。閉経前後の集団におけるHDL-C、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)、総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)レベルを報告した研究を対象とした。
組み入れられた研究の質は、Cross-Sectional/Prevalence Study Qualityツールを用いて評価した。標準平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて推定した。メタ回帰分析とサブグループ分析を実施し、潜在的な修飾因子を特定した。Eggerの検定とファンネルプロットを作成し、出版バイアスを評価した。
18件の横断研究と2件のコホート研究(閉経後女性5652人、閉経前女性7825人)の脂質プロファイルをメタ分析した結果、閉経後女性と閉経前女性のHDL-Cレベルに有意差は認められなかった(SMD = -0.053、95%CI -0.171~0.066、p = 0.383)。メタ回帰分析において、国、出版年、研究の質、有意な出版バイアスの影響は認められなかった。
閉経後女性では、閉経前女性と比較して、LDL-C、TC、TGレベルが高いことが明らかになった。
本メタ分析は、閉経前後の女性の脂質プロファイルを調べた初のメタ分析であり、閉経後女性ではLDL-C、TC、TGレベルの上昇が見られるものの、HDL-Cレベルは閉経前女性と異ならなかった。将来、異なる閉経状態の女性におけるHDL-Cレベルと機能を調査した大規模な前向き研究が不可欠である。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32557344,
[quote_source]: Li H, Sun R, Chen Q, Guo Q, Wang J, Lu L and Zhang Y. “Association between HDL-C levels and menopause: a meta-analysis.” Hormones (Athens, Greece) 20, no. 1 (2021): 49-59.