「骨粗鬆症かな?」と感じていても、自覚症状がないため、放置してしまう方も多いのではないでしょうか?実は、骨粗鬆症は「沈黙の病気」と呼ばれ、気づかないうちに骨折してしまうケースも少なくありません。70代の女性の約3人に1人は骨粗鬆症と言われています。軽い尻もちや咳、くしゃみなどの日常動作で骨折してしまうことも。骨折は寝たきりや要介護状態のリスクを高め、生活の質を大きく低下させる可能性があります。
この記事では、骨粗鬆症の原因とリスクファクターを5つのポイントに絞って解説し、早期発見と予防の大切さを理解していただきます。ご自身の生活習慣を見直し、骨粗鬆症から身を守るための第一歩を踏み出しましょう。
【この記事の著者のご紹介】
みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
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内視鏡といえば天白橋。内科もやっぱり天白橋。天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。
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骨粗鬆症の原因とリスクファクター5選
骨粗鬆症は、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症は「沈黙の病気」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行することが多く、気づかないうちに骨折してしまうケースも少なくありません。
例えば、くしゃみや軽い尻もちといった日常動作で骨折してしまうこともあります。特に高齢者の場合、骨折をきっかけに寝たきりになってしまう可能性も高く、生活の質を大きく低下させてしまう深刻な病気です。
骨粗鬆症は様々な原因が複雑に絡み合って発症します。加齢、遺伝、生活習慣、特定の病気など、様々な要因が影響を及ぼします。もしかしたら、あなたも気づかないうちにリスクを抱えているかもしれません。
この章では、骨粗鬆症の主な原因とリスクファクターについて、5つのポイントに絞ってわかりやすく解説します。ご自身の生活習慣を振り返りながら、一緒に見ていきましょう。
加齢による骨密度の低下
私たちの骨は、常に古い骨が壊される「骨吸収」と、新しい骨が作られる「骨形成」という新陳代謝を繰り返しています。子供の頃は骨形成が活発で、骨量はどんどん増えていきます。そして、20~30歳頃にピークを迎えます。これを「最大骨量」と言います。
しかし、ピークを過ぎると徐々に骨吸収が骨形成を上回るようになり、骨密度が低下していきます。これは自然な老化現象の一つであり、誰にでも起こることです。
特に女性は、閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少するため、骨吸収がさらに促進され、骨密度が大きく低下します。閉経後の女性は、骨粗鬆症になりやすいということを覚えておきましょう。
例えば、70代の女性が来院された際、レントゲン写真で背骨が圧迫骨折していることがわかり、骨粗鬆症と診断されるケースは珍しくありません。ご高齢の女性にとって、骨粗鬆症は身近な病気なのです。
遺伝的要因と家族歴
骨粗鬆症は、遺伝的な要因も大きく影響します。両親や祖父母など、近親者に骨粗鬆症の方がいる場合、あなたも骨粗鬆症になりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。これは、骨の質や骨代謝に関わる遺伝子が関係していると考えられています。
もちろん、遺伝的要因だけで骨粗鬆症になるわけではありません。しかし、他のリスクファクターと重なると発症リスクは高まります。遺伝的な体質は変えることができませんが、他のリスクファクターをコントロールすることで、骨粗鬆症の発症リスクを下げることができます。
家族に骨粗鬆症の方がいる場合は、特に注意が必要です。ご自身の生活習慣を見直し、予防に努めましょう。
栄養不足:カルシウムとビタミンD
骨の健康を維持するためには、カルシウムとビタミンDが不可欠です。カルシウムは骨の主成分であり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあります。これらの栄養素が不足すると、骨がもろくなり、骨粗鬆症のリスクが高まります。
カルシウムは牛乳や乳製品、小魚、緑黄色野菜などに多く含まれています。1日に必要なカルシウムの摂取量は、成人でおよそ600~800mgです。しかし、現代の食生活では、カルシウムが不足しがちです。意識してカルシウムを多く含む食品を摂るように心がけましょう。
ビタミンDは鮭やさんまなどの魚類、きのこ類、卵などに多く含まれています。また、日光を浴びることで体内でビタミンDが作られます。バランスの良い食事と適度な日光浴を心がけることが大切です。
ライフスタイル:喫煙と運動不足
喫煙は、骨密度を低下させる大きなリスクファクターです。タバコに含まれるニコチンは、骨を作る細胞の働きを阻害し、骨を壊す細胞の働きを促進する作用があるため、骨量が減少しやすくなります。禁煙は骨粗鬆症の予防だけでなく、様々な病気の予防にもつながります。
運動不足も骨粗鬆症のリスクを高めます。骨は、適度な刺激を受けることで強くなります。逆に、運動不足の状態が続くと骨への刺激が少なくなり、骨密度が低下しやすくなります。ウォーキングやジョギングなどの適度な運動を習慣的に行うことが、骨粗鬆症の予防につながります。
激しい運動は必要ありません。1日30分程度のウォーキングでも効果があります。ご自身の体力に合わせて、無理のない範囲で運動を続けましょう。
特定の疾患や薬剤の影響
特定の疾患や薬剤が原因で、骨粗鬆症を発症するケースがあります。例えば、関節リウマチやクローン病、甲状腺機能亢進症などの疾患は、骨代謝に影響を与え、骨粗鬆症のリスクを高めます。また、ステロイド薬や抗てんかん薬などの特定の薬剤を長期的に服用している場合も、骨粗鬆症のリスクが高まることがあります。これらの疾患や薬剤の影響で骨粗鬆症を発症する場合は、「二次性骨粗鬆症」と呼ばれます。
骨粗鬆症は慢性の疾患であるため、予防措置や治療には数年、あるいは数十年単位の長期的な取り組みが必要です。根気強く治療を続けることが重要です。
骨粗鬆症の診断方法と検査の流れ
「骨粗鬆症かな?」と思ったら、まずは検査を受けてみましょう。実際、骨粗鬆症は自覚症状がほとんどないため、検査を受けなければ気づかない方が多いです。
更年期を迎えた女性や高齢の方、またご家族に骨粗鬆症の方がいる方は、特に注意が必要です。
この章では、骨粗鬆症の診断方法と検査の流れについて、名古屋市天白区の天白橋内科内視鏡クリニックの医師の視点も交えながら、わかりやすくご説明します。不安な気持ちを抱えている方も、どうぞ安心して読み進めてください。
骨密度検査(DEXA法)の特徴
骨粗鬆症の診断で最も重要な検査は、骨密度検査です。骨密度検査にはいくつか種類がありますが、当クリニックでは最も広く用いられているDEXA法(デキサ法)を採用しています。DEXA法は、微量のX線を骨に照射して、骨の密度を測定する方法です。腰椎や大腿骨など、骨折しやすい部位の骨密度を測ります。検査時間は5~10分程度と短く、痛みもありませんのでご安心ください。
以前、80代の女性が腰痛を訴えて来院された際に、DEXA法による骨密度検査を行ったところ、骨粗鬆症が判明しました。実は、この方は以前に軽い尻もちをついたことがあり、それが原因で腰椎圧迫骨折を起こしていたのです。自覚症状が乏しい骨粗鬆症だからこそ、早期発見のための検査が重要になります。
DEXA法で測定した骨密度を、若年成人の平均値と比較することで、骨粗鬆症の診断を行います。骨密度検査の結果は、「YAM値」という指標で表されます。YAM値が70%未満の場合は骨粗鬆症と診断されます。70~80%の場合は骨量減少と診断され、骨粗鬆症の一歩手前の状態です。
高齢化する世界の人口における骨粗鬆症の全体的な有病率は増加しており、骨粗鬆症は慢性の疾患であるため、予防措置や治療には数年、あるいは数十年単位の長期的な取り組みが必要です。
血液検査で確認するリスク因子
骨密度検査に加えて、血液検査も行います。血液検査では、骨代謝の状態や、骨粗鬆症のリスク因子となる病気がないかなどを調べます。具体的には、カルシウムやビタミンD、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンなどの値、肝機能や腎機能などを確認します。
例えば、カルシウムやビタミンDが不足していると、骨がもろくなりやすく、骨粗鬆症のリスクが高まります。また、甲状腺機能亢進症や副甲状腺機能亢進症などの疾患も、骨代謝に影響を与え、骨粗鬆症のリスクを高める可能性があります。
血液検査でこれらのリスク因子を確認することで、より適切な治療方針を立てることができます。
医師による問診と身体検査の重要性
検査だけでなく、医師による問診と身体検査も重要です。問診では、現在の症状、既往歴、生活習慣(食事内容、運動習慣、喫煙の有無、飲酒量など)、服用中の薬などについて詳しくお話を伺います。身体検査では、姿勢や歩行の様子、背骨の変形などを確認します。
例えば、ご家族に骨粗鬆症の方がいるか、過去に骨折の経験があるか、なども重要な情報です。閉経後の女性はエストロゲンの減少により骨密度が低下しやすいため、閉経の時期についても確認します。
これらの情報と検査結果を総合的に判断して、骨粗鬆症の診断を確定します。問診や身体検査によって、骨粗鬆症のリスクが高い方や、すでに骨折のリスクが高い状態にある方を早期に発見することができます。
セカンドオピニオンのすすめ
骨粗鬆症の診断や治療方針について、他の医師の意見を聞いてみたい場合は、セカンドオピニオンを受けることができます。セカンドオピニオンとは、現在治療を受けている医師以外の医師に意見を求めることです。セカンドオピニオンを受けることで、より納得のいく治療法を選択することができます。
セカンドオピニオンを受ける際は、主治医に相談し、紹介状を書いてもらうようにしましょう。紹介状には、これまでの検査結果や治療経過などが記載されています。セカンドオピニオンは、患者さんの権利として認められていますので、遠慮なくご希望ください。
骨粗鬆症の治療法とその特徴
骨粗鬆症と診断されたら、不安な気持ちになるのも無理はありません。ご自身の骨が脆くなっていると言われても、すぐに実感が湧かない方も多いでしょう。しかし、骨粗鬆症はまさに「沈黙の病気」。自覚症状がないまま進行し、気づかないうちに骨折してしまうケースも少なくありません。
例えば、くしゃみをした拍子に肋骨を骨折したり、軽い尻もちで背骨を圧迫骨折したりすることもあります。特に高齢者の場合、骨折をきっかけに寝たきりになってしまう可能性も高く、生活の質を大きく低下させてしまう深刻な病気です。
骨粗鬆症は、高齢化する世界人口において有病率が増加している慢性疾患であり、予防や治療には数年、あるいは数十年単位の長期的な取り組みが必要です。治療法は大きく分けて、お薬を使う「薬物療法」と、生活習慣を改善する「非薬物療法」の2つがあり、患者さんの状態に合わせて最適な治療法を一緒に考えていきます。名古屋市天白区の天白橋内科内視鏡クリニックでは、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を心がけていますので、安心してご相談ください。
薬物療法:ビスフォスフォネートの効果
骨粗鬆症の薬物療法には様々な種類がありますが、中でもビスフォスフォネートという種類のお薬がよく使われています。この薬は、骨を壊す働きのある細胞(破骨細胞)の活動を弱めることで、骨がもろくなるのを防ぎます。
ビスフォスフォネート製剤には、毎日飲むタイプや、週に1回飲むタイプ、月に1回飲むタイプ、点滴で投与するタイプなど、様々な種類があります。患者さんのライフスタイルや服薬状況に合わせて最適なものを選択します。
例えば、当クリニックでは、月に1回の点滴で効果が持続するタイプや、週に1回服用するタイプのビスフォスフォネート製剤を取り扱っています。毎日薬を飲むのが大変な方や、飲み忘れがちな方でも継続しやすい治療法です。
高齢の患者さんにとって、服薬のしやすさは非常に重要です。以前、毎日服用するタイプの薬を処方した90代の患者さんが、服薬を忘れてしまうことが多く、十分な効果が得られなかったケースがありました。そこで、週1回服用するタイプの薬に変更したところ、服薬アドヒアランス(服薬遵守)が向上し、骨密度も改善しました。このように、患者さんの状況に合わせた薬剤選択が重要です。
非薬物療法:生活習慣の改善と運動
薬物療法と並行して、生活習慣を改善することも骨粗鬆症の治療・予防には非常に大切です。特に、カルシウムとビタミンDを十分に摂取することは、健康な骨を維持するために不可欠です。カルシウムは牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、小松菜やひじきなどの緑黄色野菜、豆腐や納豆などの大豆製品に多く含まれています。
ビタミンDは、鮭やさんまなどの魚、きのこ類、卵に多く含まれています。また、日光を浴びることで体内で合成されるため、適度な日光浴も効果的です。
適度な運動も骨を強くするのに効果的です。ウォーキングやジョギングなどの軽い運動を、無理のない範囲で続けるようにしましょう。運動は骨に適度な刺激を与え、骨形成を促進します。反対に、運動不足は骨への刺激を減らし、骨密度を低下させる要因となります。
以前、70代の女性で、運動習慣がなく、屋内にいることが多かった方が来院されました。骨密度検査の結果、骨粗鬆症と診断され、薬物療法に加えて、ウォーキングなどの運動を始めることをお勧めしました。半年後、再び骨密度検査を行ったところ、骨密度が改善していました。薬物療法と運動療法を組み合わせることで、より効果的に骨粗鬆症を治療することができます。
治療期間とフォローアップの重要性
骨粗鬆症の治療は、数ヶ月や半年で終わるものではありません。骨粗鬆症は慢性疾患であるため、長期的な治療が必要となるケースが多く、場合によっては生涯にわたって継続する必要があります。定期的な骨密度検査や血液検査を行い、治療の効果や副作用の有無を確認しながら、治療方針を調整していくことが重要です。
治療中は、医師や看護師と積極的にコミュニケーションを取り、疑問点や不安なことがあれば、いつでも相談するようにしましょう。当クリニックでは、患者さんが安心して治療を続けられるよう、サポート体制を整えています。
副作用と治療費についての考慮事項
薬物療法には、副作用が現れる可能性もあります。ビスフォスフォネート製剤では、吐き気や胃の不快感、便秘などの消化器症状、筋肉痛や関節痛などが報告されています。副作用が強い場合は、薬の種類を変える、休薬する、他の薬剤と併用するなど、対応が必要になることもあります。
また、骨粗鬆症の治療には費用がかかります。健康保険が適用されますが、自己負担額が発生します。治療費については、事前に医師や医療機関のスタッフに確認しておきましょう。経済的な負担が心配な場合は、高額療養費制度などの公的な支援制度を利用できる場合もありますので、ご相談ください。
骨粗鬆症の治療は長期にわたることが多いですが、根気強く治療を続けることで、骨折のリスクを減らし、健康な生活を送ることができます。医師とよく相談しながら、ご自身に合った治療法を見つけ、治療に取り組んでいきましょう。
まとめ
骨粗鬆症は、自覚症状がないまま進行し、骨折のリスクを高める病気です。加齢、遺伝、生活習慣、特定の病気など、様々な要因が骨粗鬆症の発症に影響を与えます。骨粗鬆症の早期発見には、骨密度検査が重要です。検査結果に基づき、薬物療法や生活習慣改善など、患者さんの状態に合わせた治療法が選択されます。治療には長期的な取り組みが必要ですが、根気強く続けることで、骨折のリスクを減らし、健康的な生活を送ることが可能です。
全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。
令和6年11月13日
天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
参考文献
- Foessl I, Dimai HP, Obermayer-Pietsch B. Long-term and sequential treatment for osteoporosis. Nature reviews. Endocrinology 19, no. 9 (2023): 520-533.
追加情報
骨粗鬆症の長期および順序的な治療
【要約】
- 骨粗鬆症は、骨組織の損傷と強度の低下を引き起こし、脆弱骨折のリスクが徐々に増加する骨の障害です。
- 高齢化する世界の人口における骨粗鬆症の全体的な有病率は増加しています。
- 骨粗鬆症は慢性の疾患であるため、予防措置や治療には数年または数十年の期間が必要です。
- 骨吸収抑制薬や骨形成薬を含む骨に特異的な薬物療法の長期的な使用には、治療中止後の副作用またはリバウンド現象への懸念が存在します。
- これらの治療の開始およびモニタリング時の画像オプション、リスクスコア、および骨ターンオーバーの評価は、個別化された治療戦略の情報提供に役立つ可能性があります。
- 現在は、組み合わせ療法は「順序的な」治療よりも少なく使用されています。
- しかし、骨粗鬆症を持つすべての患者、包括的な治療と疾患モニタリングのための新しいアプローチが必要です。特に、二次性および稀な骨粗鬆症の原因を持つ患者、特定の患者集団(例:若年成人、男性、妊婦)を含みます。
- 骨代謝の新しい病理生理学的な側面は、骨粗鬆症の診断と治療において情報提供し革新するかもしれません。
【出典】 © 2023. Springer Nature Limited.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37464088
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[quote_source]: Foessl I, Dimai HP and Obermayer-Pietsch B. “Long-term and sequential treatment for osteoporosis.” Nature reviews. Endocrinology 19, no. 9 (2023): 520-533.