あなたは、妊娠中の風疹感染が胎児に深刻な影響を与える先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす可能性があることをご存知でしょうか? 風疹は空気感染するため、妊婦さんだけでなく、周囲の人々もワクチン接種で感染を防ぐことが重要です。
実は、妊娠初期に風疹に感染すると、CRS発症のリスクは50%以上にも上ります。 これは決して他人事ではありません。風疹は過去の病気ではなく、今もなお流行のリスクが存在するのです。
この記事では、風疹の症状や感染経路、そして恐ろしいCRSについて詳しく解説します。さらに、風疹ワクチン接種の重要性や効果、費用、接種の流れまで網羅的にご紹介します。自分自身と大切な家族を守るために、今こそ風疹について正しく理解しましょう。
【この記事の著者のご紹介】
みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
内視鏡といえば天白橋。内科もやっぱり天白橋。天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。
https://tenpakubashi-cl.com/staff/
https://tenpakubashi-cl.jbplt.jp/
目次
風疹の基本情報と症状
風疹は、ワクチンで予防できる感染症です。しかし、ワクチン接種を受けていない世代を中心に、未だに流行のリスクが懸念されています。特に妊娠中の女性が風疹に感染すると、お腹の赤ちゃんに深刻な影響を与える可能性があるため、注意が必要です。風疹について正しく理解し、自分自身と大切な家族を守りましょう。
風疹とはどんな病気?
風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。感染力が非常に強く、飛沫感染で簡単に人から人へうつってしまいます。以前、私が外来を担当していた時に、風疹の患者さんを診察した直後に、同じ待合室にいた別の方も感染してしまったケースがありました。当時はまだワクチン接種が普及しておらず、このようなケースは珍しくありませんでした。
風疹は、子どもがかかりやすい病気ですが、大人も感染する可能性があります。特に妊娠初期の女性が風疹に感染すると、お腹の赤ちゃんに先天性風疹症候群(CRS)という深刻な障害を引き起こす可能性があります。CRSは、赤ちゃんに心臓病、難聴、白内障、知的障害など、さまざまな障害を引き起こす可能性がある非常に恐ろしい病気です。
風疹の感染経路と潜伏期間
風疹は、主に咳やくしゃみなどの飛沫感染によって広がります。感染者の咳やくしゃみによってウイルスを含んだ目に見えないほど小さな飛沫が空気中に飛び散り、それを吸い込むことで感染します。感染者の鼻水や唾液などがついたおもちゃやドアノブなどを触った後、自分の口や鼻を触れることでも感染する可能性があります。まるで忍者の様に、気づかないうちに感染してしまうのです。
風疹の潜伏期間は2〜3週間です。つまり、感染してから症状が現れるまでに2〜3週間かかるということです。例えば、2週間前に感染したとすると、今日から明日にかけて症状が現れる可能性があるということです。感染した人は、発疹が出る1週間前から発疹が出てから1週間後まで、他の人にうつす可能性があります。自分が感染していることに気づかないまま、周りの人にうつしてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
子供と大人の風疹の症状の違い
子どもの風疹は、比較的軽い症状で済むことが多いです。主な症状は、発疹、発熱、リンパ節の腫れです。発疹は、顔から始まり、体や手足に広がっていきます。ピンク色で少し盛り上がった小さな発疹で、かゆみはあまりありません。経験上、子どもの風疹では、発熱も38度程度で済むことが多く、比較的元気に過ごせるお子さんもいます。
一方、大人の風疹は、子どもの風疹よりも症状が重い場合があります。発疹が出ないこともありますが、高熱、関節痛、頭痛などが現れることがあります。40度近い高熱が出ることもあり、関節痛がひどい場合は、歩くのも困難になることがあります。私が診察した患者さんの中には、高熱と関節痛で全く動けなくなり、救急車で搬送された方もいました。
風疹の合併症と後遺症(脳炎、血小板減少性紫斑病など)
風疹は通常、軽症で治りますが、まれに合併症を引き起こすことがあります。合併症には、脳炎、肺炎、血小板減少性紫斑病などがあり、命に関わることもあります。脳炎は脳に炎症が起こる病気で、頭痛、発熱、意識障害などの症状が現れます。肺炎は肺に炎症が起こる病気で、咳、痰、発熱などの症状が現れます。血小板減少性紫斑病は、血液中の血小板が減少する病気で、皮膚や粘膜からの出血が起こりやすくなります。
また、風疹の後遺症として、難聴、白内障、心疾患などが残ることもあります。特に、妊娠中に風疹に感染すると、お腹の赤ちゃんに先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす可能性があります。CRSの後遺症として、難聴、白内障、心疾患などが残ることがあります。実際に私が担当した患者さんで、妊娠中に風疹に感染し、赤ちゃんが難聴を持って生まれてきたケースがありました。生まれてくる赤ちゃんのために、風疹の予防は非常に重要です。
風疹ワクチン接種の重要性と先天性風疹症候群
風疹は、ワクチンで予防できる感染症です。しかし、だからこそ、ワクチン接種を受けていない世代を中心に、未だに流行のリスクが懸念されています。妊娠中の女性が風疹に感染すると、お腹の赤ちゃんに深刻な影響を与える可能性があるため、特に注意が必要です。今回は、風疹ワクチン接種の重要性と、風疹感染によって引き起こされる先天性風疹症候群について、より詳しく解説します。
先天性風疹症候群(CRS)とは?
先天性風疹症候群(CRS)とは、妊娠中に母親が風疹ウイルスに感染することで、お腹の赤ちゃんに様々な障害が出てしまう病気です。風疹ウイルスは、赤ちゃんの発育に重要な時期に、体の中に入り込んで、まるで静かに成長を阻害する爆弾のように悪影響を及ぼします。
具体的には、心臓の壁に穴が開いてしまう「心室中隔欠損症」や、動脈と静脈をつなぐ血管が閉じずに血液がうまく循環しない「動脈管開存症」などの心疾患、耳が聞こえにくくなる「難聴」、目が見えにくくなる「白内障」、そして、発達に遅れが出てしまう「知的障害」など、深刻な症状が現れる可能性があります。最近私が担当した症例では、軽度の難聴と診断されたお子さんのご両親が、赤ちゃんの泣き声に気づきにくかったというケースがありました。早期発見が重要ですので、少しでも気になることがあれば、すぐに医療機関に相談することをお勧めします。
これらの障害は、単独で現れることもあれば、複数合併することもあります。障害の程度も、軽度なものから重度なものまで様々です。妊娠初期、特に妊娠20週未満で感染した場合、赤ちゃんへの影響が大きくなる傾向があります。
妊娠中の風疹感染リスク
妊娠中に風疹に感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群(CRS)を引き起こすリスクが上昇します。特に妊娠初期の感染はCRSのリスクが非常に高く、注意が必要です。妊娠初期は、赤ちゃんの臓器が形成される大切な時期です。この時期に風疹ウイルスが侵入すると、臓器の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
例えば、妊娠1ヶ月頃に感染した場合、CRSを発症する確率は50%以上とも言われています。これは、風疹流行期に妊婦さんが感染した場合、約半数のお腹の赤ちゃんがCRSを発症する可能性があるということです。妊娠週数が進むにつれてリスクは下がりますが、妊娠4ヶ月頃でも約10%の確率でCRSを発症する可能性があります。決して安心できる数字ではありません。
実際に、私がかつて勤務していた総合病院では、妊娠初期に風疹に感染した妊婦さんが、CRSの赤ちゃんを出産したという悲しいケースがありました。この経験からも、妊娠中の風疹感染は絶対に避けなければならないと強く感じています。妊娠中に風疹の疑いがある場合は、すぐに産婦人科を受診し、適切な検査と対応を受けるようにしてください。
風疹ワクチン接種の効果と安全性
風疹ワクチンを接種することで、風疹ウイルスに対する免疫を獲得できます。免疫とは、一度感染した病原体に対して抵抗力を持ち、再び感染しにくくなる仕組みです。免疫がつくと、風疹ウイルスが体内に入っても、発症を防いだり、症状を軽くしたりできます。風疹ワクチンは、自分自身だけでなく、将来生まれてくる赤ちゃんも風疹から守るための、いわば盾のような役割を果たします。
風疹ワクチンは、非常に安全性の高いワクチンです。副作用はまれで、接種部位が赤くなったり、腫れたり、痛んだりすることがありますが、通常は数日で治まります。これは、ワクチンが免疫システムを活性化させている証拠であり、心配ありません。ごくまれに、発熱や発疹などの症状が現れることもありますが、ほとんどの場合、軽度で済みます。過去に私がワクチン接種を行った患者さんの中で、重篤な副作用が出た方は一人もいませんでした。
風疹ワクチンの種類と接種スケジュール
風疹ワクチンは、麻疹ワクチンと混合されたMRワクチンとして接種されます。一度に二つの病気を予防できるため、効率的です。MRワクチンは、生後1歳と小学校入学前の2回の接種が推奨されています。2回接種することで、より確実な免疫を獲得できます。
もし、過去に風疹ワクチンを接種したことがない、あるいは接種回数が不明な場合は、年齢に関わらず接種を受けることができます。妊娠を希望している女性や、妊娠の可能性のある女性は、事前に風疹の抗体検査を受けて、抗体価が低い、あるいは抗体がない場合はワクチン接種を検討しましょう。抗体検査は、採血で簡単に調べることができます。
名古屋市における風疹ワクチン接種費用と補助制度
45歳から62歳の男性の皆様へ 風しんの抗体を持っていると思い込んでいませんか?
- 昭和37年4月2日から昭和54年4月1日の間に生まれた男性は、風しんの定期予防接種を一度も受けていません。
- 「風しんにかかったことがあるから大丈夫」と思っている人も、実は水ぼうそうや、はしか等の他の感染症と勘違いしていませんか?
- この年代の男性は、女性や他の年代の男性よりも抗体保有率が低く、風しんに感染するリスクが高いため、実際に近年発生した風しんの流行でも感染の中心となった世代です。
- 自覚症状が少ないため、電車や職場など人が集まる場所で、気づかないうちに周囲の人たちに感染を広げてしまう恐れがあります。
- もし妊娠初期の女性が風しんに感染してしまうと、赤ちゃんが心疾患、白内障、難聴などの先天性の障害を持って生まれる可能性があります(先天性風しん症候群)。
抗体検査を受けましょう!
- 血液検査を行います。
- 風しんの無料クーポン券と名古屋市に住民票があることが分かる本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)を必ずお持ちください。この2点をお持ちでない場合、無料で受けることができません。
- 通常2週間ほどで結果が分かります。
予防接種を受けましょう!
- 抗体検査の結果、風しんに対する免疫が不十分と判断された方は、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を接種します。
- 風しんの無料クーポン券と名古屋市に住民票があることが分かる本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード等)を必ずお持ちください。この2点をお持ちでない場合、無料で受けることができません。
- 接種を受ける医療機関とは別の医療機関で抗体検査を受けられた場合は、検査結果の分かるものをお持ちください。
名古屋市では、風疹抗体検査とワクチン接種費用を補助する制度があります。補助の対象となるのは、名古屋市に住民登録がある方で、年齢や条件によって補助額が異なります。
例えば、妊娠を希望する女性やその配偶者、妊娠中の女性などは、無料または一部負担で接種を受けることができます。名古屋市は、将来の世代を風疹から守るために、積極的な対策を行っています。また、特定の年齢層の男性も、無料または一部負担で接種を受けることができます。風疹は、女性だけの問題ではありません。男性もワクチン接種を受けることで、感染拡大を防ぎ、社会全体を守ることができます。
具体的な補助内容や対象年齢、助成内容については、名古屋市のホームページや、お近くの医療機関にお問い合わせください。天白橋内科内視鏡クリニックでも風疹ワクチン接種を行っていますので、お気軽にご相談ください。
天白橋内科内視鏡クリニックでの風疹ワクチン接種案内
風疹は、ワクチンで予防できる病気です。特に妊娠を希望されている方や、周囲に妊婦さんがいる方は、風疹への感染リスクについて心配されていることと思います。天白橋内科内視鏡クリニックでは、皆さまの不安を少しでも解消し、安心してワクチン接種を受けていただけるよう、丁寧な説明と対応を心がけています。風疹はワクチンで予防できる病気です。どうぞお気軽にご相談ください。
よくある質問(副作用、接種禁忌など)
風疹ワクチン接種について、よくあるご質問にお答えします。
Q1. 風疹ワクチンの副作用はありますか?
A1. 風疹ワクチンは、高い安全性が確認されていますが、他のワクチンと同様に、まれに副作用が起こることがあります。主な副作用は、接種部位の痛み、発赤、腫れです。その他、発熱、発疹、じんましんなどが現れる場合もありますが、通常は数日以内に軽快します。過去に私がワクチン接種を行った患者さんの中で、重篤な副作用が出た方は非常に稀です。
Q2. ワクチンを接種できない人はいますか?
A2. はい。以下のような方は、風疹ワクチンを接種することができません。
- 37.5℃以上の発熱がある方:風邪などの感染症が疑われる場合は、治ってから接種しましょう。
- 重い急性疾患にかかっている方:入院加療が必要な病気にかかっている場合は、病状が安定してから接種を検討します。
- 妊娠している方、または妊娠の可能性のある方:風疹ワクチンは生ワクチンですので、妊娠中は接種できません。妊娠を希望される方は、事前に接種を済ませておくことをお勧めします。
- 過去に風疹ワクチンを接種して、アナフィラキシーなどの重いアレルギー反応を起こしたことがある方:過去に重篤なアレルギー反応があった場合は、接種を控える必要があります。
- ゼラチン、または抗生物質(ネオマイシン、ストレプトマイシン、ポリミキシンB)にアレルギーのある方:ワクチンの成分にアレルギーがある場合は、接種できません。
Q3. 風疹ワクチンは、いつ接種すればいいですか?
A3. 風疹ワクチンは、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として、生後1歳と小学校入学前の2回の接種が推奨されています。また、妊娠を希望する女性で、風疹に対する免疫がない場合は、妊娠前に2回接種を済ませておくことが重要です。抗体検査で免疫の有無を確認できますので、ご希望の方はお気軽にご相談ください。
アクセス方法(名古屋市営地下鉄鶴舞線「原駅」より徒歩2分)
天白橋内科内視鏡クリニックは、名古屋市営地下鉄鶴舞線「原駅」2番出口より徒歩2分の場所にございます。雨の日でも濡れずに来院いただけます。お車でお越しの際は、近隣の提携駐車場(タイムズなど)をご利用いただけます。最初の1時間は無料です。詳しくは、当クリニックのウェブサイトのアクセスマップをご覧ください。
その他予防接種・健康診断のご案内
天白橋内科内視鏡クリニックでは、風疹ワクチン以外にも、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなど、各種予防接種を行っております。また、特定健診、雇い入れ時健診などの健康診断や人間ドックも実施しておりますので、お気軽にご相談ください。皆さまの健康を総合的にサポートさせていただきます。
まとめ
風疹は飛沫感染する感染症で、妊娠中の感染は胎児に先天性風疹症候群(CRS)を引き起こすリスクがある。CRSは、心疾患、難聴、白内障、知的障害など深刻な症状を引き起こす。風疹はワクチンで予防可能で、MRワクチンを2回接種することで確実な免疫を獲得できる。妊娠希望者は抗体検査を受け、免疫がない場合は妊娠前に接種することが重要。 名古屋市では風疹ワクチン接種費用補助制度があり、対象者によっては無料または一部負担で接種可能。天白橋内科内視鏡クリニックでは風疹ワクチン接種を行っており、予約から接種後の経過観察まで、丁寧な対応を心がけている。接種前に医師の診察があり、ワクチン接種が可能かどうか判断される。よくある副作用は接種部位の痛み、発赤、腫れ等で、通常は数日で軽快する。発熱や妊娠中の方などは接種禁忌となる場合があるため、事前に確認が必要。
全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。
令和6年11月9日
天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
ホームページ(←こちらをクリック)
内視鏡のページ(←こちらをクリック)
その他のブログ一覧(←こちらをクリック)
当院の採用情報(←こちらをクリック)