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「寝たのに眠い」「息が止まっている気がする」と感じたことはありませんか? 睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧や心臓病などのリスクを高めるだけでなく、日中の眠気や集中力低下を引き起こし、生活の質を大きく損なう可能性があります。 2020年には、睡眠時無呼吸症候群の患者数は150万人を超え、増加傾向にあります。 本記事では、睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状を5つご紹介し、その原因やリスク要因について詳しく解説します。 さらに、効果的な治療法であるCPAP療法について、その仕組みや注意点、メリットなどをわかりやすく説明していきます。 睡眠時無呼吸症候群の症状に心当たりがある方は、ぜひ本記事を読んで、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
目次
睡眠時無呼吸症候群の5つの主要な症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS)って、なんだか難しそうな病名ですよね。
「ちょっと息が止まるくらい、大丈夫でしょ?」
そう思っていませんか?
実は、睡眠時無呼吸症候群は放っておくと、命にも関わる怖い病気なんです。
今回は、睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状を5つ、わかりやすく解説していきます。
もしかしたら、あなたや、あなたの大切な人が危険信号に気づいていないのかもしれません。
日中の眠気と疲労感の増加
「夜、ちゃんと寝たはずなのに、日中も眠くて仕方がない…」
「体がだるくて、家事をするのも億劫だ…」
そんな経験はありませんか?
実は、それは睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠中に呼吸が何度も止まり、脳や体が酸素不足の状態になってしまいます。
たとえるなら、マラソンを走っている最中に、何度も呼吸を止められているような状態です。
これでは、いくら寝ても、しっかり体が休まりませんよね。
その結果、日中に強い眠気や疲労感を感じやすくなってしまうのです。
例えば、こんなことはありませんか?
- 会議中に、意識が飛んでしまい、上司に怒られた
- 運転中に、眠気が襲ってきて、危ない目にあった
- 家事をしている最中に、うっかり包丁で指を切ってしまった
「歳のせいかな」「疲れているだけだろう」そう思っていませんか?
もし、このような症状が頻繁に起こる場合は、一度、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみる必要があるかもしれません。
いびきと呼吸の停止
「うちの主人のいびきがうるさくて、毎晩眠れないの!」
奥様から、こんな愚痴をよく聞きます。
実は、大きないびきは、睡眠時無呼吸症候群のサインである可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中に気道が狭くなってしまいます。
気道が狭くなると、空気の通り道が狭くなってしまいます。
その結果、空気の通り道を通ろうとする空気によって、のどちんこや口蓋垂などが振動し、いびきが発生します。
まるで、細いホースに無理やり空気を通そうとすると、音が鳴るのと同じような状態です。
そして、気道が完全に塞がってしまうと、呼吸が一時的に止まってしまうことがあります。これが、睡眠時無呼吸です。
睡眠時無呼吸は、10秒以上続くこともあり、一晩に何度も繰り返されることがあります。
もし、あなたの隣で寝ている人が、大きないびきをかいていて、さらに、いびきが止まった後に呼吸が再開しない場合は、危険信号です。
すぐに医療機関を受診しましょう。
睡眠中の頻繁な覚醒
「夜中に何度も目が覚めてしまって、ぐっすり眠れない…」
「朝起きても、全然疲れが取れていない…」
あなたは、このような悩みを抱えていませんか?
実は、睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠中に何度も目が覚めてしまうことがあります。
睡眠時無呼吸によって、体内の酸素濃度が低下すると、脳が危険信号を察知します。
そして、「危ない!早く目を覚まして呼吸しないと!」と、脳が体に指令を出すため、目が覚めてしまうのです。
まるで、火災報知器が鳴って、眠りから強制的に起こされるようなイメージです。
そのため、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中に何度も目が覚めてしまい、深い睡眠を得ることが難しくなります。
その結果、朝起きた時に、スッキリとした爽快感を得られず、日中の眠気や疲労感につながってしまうのです。
「疲れているから、夜中に目が覚めるの?」「歳のせいだから仕方ない…」
そう安易に考えていませんか?
もしかしたら、それは睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
一度、医療機関を受診してみることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群の原因とリスク要因
睡眠時無呼吸症候群(SAS)って、なぜ起こるのか気になりますよね?
実は、いくつかの原因やリスク要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
ここでは、代表的な原因とリスク要因について、患者さんの訴えを交えながら具体的に説明していきます。
肥満と体脂肪の影響
「先生、最近太っちゃって…」
診察室で、よくこんな言葉を耳にします。
実は、肥満は、睡眠時無呼吸症候群の最も大きなリスク要因の一つなんです。
特に、首回りに脂肪が多いと、気道が狭くなってしまい、呼吸が止まりやすくなります。
「太っていると、どうして呼吸が止まりやすくなるの?」
そう思われる方もいるかもしれません。
想像してみてください。
あなたは今、やわらかいソファに寝転がっています。
すると、体の重みでソファが沈み込み、体がソファに包み込まれるように感じますよね?
これと同じように、首回りに脂肪が多いと、その重みで気道が圧迫されてしまうんです。
さらに、気道の内側にも脂肪がつき、空気の通り道が狭くなってしまうため、呼吸がより一層しにくくなってしまうのです。
これは、まるで、ストローを太らせるほど、ジュースが飲みづらくなるのと似ています。
肥満による睡眠時無呼吸症候群は、適切な食生活や運動習慣を見直すことで改善する可能性があります。
「最近、体重が増えてきたな…」と感じたら、生活習慣を見直す良い機会かもしれません。
年齢と性別によるリスク
睡眠時無呼吸症候群は、年齢を重ねるごとに発症率が高くなる傾向があります。
「先生、私も歳だから仕方ないのかしら…」
診察室で、患者さんからこう言われることもしばしばあります。
加齢に伴い、筋肉は少しずつ衰えていきます。
これは、体の表面にある筋肉だけでなく、気道を広げている筋肉にも起こります。
筋肉の衰えによって気道の弾力が低下すると、睡眠中に気道が狭くなりやすくなってしまうのです。
また、男性は女性に比べて、睡眠時無呼吸症候群のリスクが2~3倍高いと言われています。
これは、男性ホルモンが、気道の筋肉を弛緩させる働きがあるためと考えられています。
扁桃腺やアデノイドの肥大
「先生、うちの子、いつも口を開けて寝ているんです…」
小さなお子さんを持つ親御さんから、このような相談を受けることがあります。
扁桃腺やアデノイドは、喉の奥にあるリンパ組織で、細菌やウイルスから体を守る、いわば「体の門番」です。
しかし、この門番が肥大してしまうと、気道を狭くしてしまうため、睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。
特に、子どもは扁桃腺やアデノイドが大きくなりやすいため、睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。
扁桃腺が大きくなってしまった子どもは、いびきをかいたり、呼吸が苦しそうに寝ていることがあります。
また、日中も、口呼吸が多くなったり、集中力が続かなかったりするなどの症状が現れることもあります。
「うちの子、もしかして…? 」
そう思ったら、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
CPAP療法の効果と注意点
睡眠時無呼吸症候群と診断され、「CPAP療法を始めましょう」と医師から言われた方もいるかもしれません。
「CPAP? なんか大たいそうな機械だけど、本当に効果あるの?」
「毎日、マスクをつけるなんて、面倒くさそう…」
そう思っていませんか?
確かに、CPAP療法は、睡眠中に鼻にマスクを装着する必要があり、最初は抵抗を感じる方もいるかもしれません。
しかし、CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の治療において、最も効果的で、安全な治療法の一つです。
今回は、CPAP療法の効果や注意点について、なるべくわかりやすく解説していきますので、安心して治療をスタートできるよう、ぜひ参考にしてみてください。
CPAP療法の基本的な仕組み
CPAP療法とは、一体どのような仕組みで、睡眠時無呼吸を改善するのでしょうか?
CPAPとは、「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では「経鼻的持続陽圧呼吸療法」と言います。
少し難しい言葉ですが、簡単に言うと、「鼻に装着したマスクを通して空気を送り込み、気道を広げてくれる治療法」のことです。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中に気道が狭くなったり、塞がったりしてしまうことで、呼吸が止まってしまいます。
CPAP療法では、専用の機械を使って、気道に一定の圧力で空気を送り込み続けることで、狭くなった気道を押し広げ、空気の通り道を確保します。
イメージとしては、寝ている間ずっと、やさしい風で空気の通り道を広げてくれる、という感じです。
これによって、睡眠中の呼吸が楽になり、ぐっすり眠れるようになるんですよ。
治療の成功率とそのメリット
「CPAP療法って、本当に効果があるの?」
多くの患者さんから、この質問を受けます。
CPAP療法の効果については、多くの研究が行われており、その効果は医学的に証明されています。
例えば、ある研究では、CPAP療法を1か月間、そして1年間継続した結果、治療開始前に比べて眼圧が有意に上昇したという報告があります。
眼圧とは、目の硬さのことを指し、緑内障などの目の病気と関連しています。
睡眠時無呼吸症候群は、眼圧を上昇させる要因の一つと考えられており、CPAP療法によって眼圧が改善されたということは、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されたことを示唆しています。
もちろん、CPAP療法の効果には個人差がありますが、きちんと使用すれば、多くの患者さんが症状の改善を実感できます。
実際に、CPAP療法を始めた患者さんから、「日中の眠気がなくなって、仕事に集中できるようになった!」「いびきがなくなって、妻もぐっすり眠れるようになったと喜んでいるよ!」といった喜びの声を聞くことも少なくありません。
CPAP療法によって期待できるメリットとしては、具体的には以下のようなものがあります。
メリット | 説明 |
---|---|
日中の眠気軽減 | ぐっすり眠れるようになるので、日中もスッキリと過ごせます。 |
いびきの改善 | 気道が 広がることで、空気の流れがスムーズになり、いびきが軽減されます。 |
集中力・記憶力の向上 | 睡眠の質が向上することで、脳がしっかりと休まり、集中力や記憶力のアップに繋がります。 |
生活習慣病のリスク軽減 | 睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めますが、CPAP療法で呼吸状態が改善すると、これらのリスクを減らす効果も期待できます。 |
使用時の注意点と対策
CPAP療法は、とても効果的な治療法ですが、使い始めは、いくつか注意点があります。
まず、CPAP療法を始めたばかりの頃は、マスクの装着感に慣れないために、寝苦しさを感じたり、朝起きた時に、顔にマスクの跡がついてしまったりすることがあります。
また、鼻が詰まりやすい人や、鼻炎を持っている人などは、CPAP療法中に鼻詰まりが悪化したり、口呼吸になってしまい、口が渇いてしまうことがあります。
さらに、CPAP装置から送られてくる空気が乾燥していると感じ、喉や鼻の乾燥に悩まされる人もいます。
しかし、これらのトラブルの多くは、CPAP療法を続けることで徐々に慣れていくものがほとんどです。
注意点 | 対策 |
---|---|
鼻づまり | 鼻腔スプレーを使用したり、医師に相談してマスクのサイズや種類を調整することで改善できることがあります。 |
マスクの圧迫感 | 顔の形に合ったマスクを選ぶことが大切です。いくつか試着して、自分に合ったものを探しましょう。 |
空気の乾燥 | 加湿機能付きのCPAP装置を使用したり、部屋を加湿したりすることで、乾燥を防ぎます。 |
CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するだけでなく、QOL(生活の質)の向上にも大きく貢献します。
最初は慣れないことや、戸惑うこともあるかもしれませんが、医師やスタッフのアドバイスを受けながら、根気強く続けることが大切です。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、いびきや日中の眠気、睡眠中の呼吸停止など、様々な症状を引き起こす病気です。放置すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、命に関わる危険性もあります。
原因としては、肥満や加齢、扁桃腺やアデノイドの肥大などが挙げられます。治療法としては、CPAP療法が最も効果的で、安全な方法とされています。CPAP療法は、鼻にマスクを装着して空気を送り込み、気道を広げて呼吸を楽にする治療法です。
CPAP療法は、日中の眠気や疲労感を軽減するだけでなく、いびきの改善、集中力や記憶力の向上、生活習慣病のリスク軽減などのメリットが期待できます。ただし、マスクの装着感や乾燥など、注意点もいくつかあります。医師の指導のもと、適切な使用方法を守り、根気強く続けることが大切です。
全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。
令和6年8月26日 天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
・がん治療認定医
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参考文献
- Singh M, Deokar K, Dutta S, Sinha BP, Katoch CDS. Impact of positive airway pressure therapy on intraocular pressure in obstructive sleep apnea: A systematic review. European journal of ophthalmology, no. (2024): 11206721241249502.
追加情報
[title]: Impact of positive airway pressure therapy on intraocular pressure in obstructive sleep apnea: A systematic review.,
閉塞性睡眠時無呼吸症候群における陽圧呼吸療法の眼圧への影響:システマティックレビュー
【要約】
背景
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者における陽圧呼吸(PAP)療法は、眼圧(IOP)に対して変動する効果が報告されている。
- 本レビューの目的は、OSA患者におけるPAPのIOPへの影響に関する利用可能な文献の質的評価を示すことである。
- オンラインデータベースから関連する記事を2023年9月まで検索した。対象は、ランダム化比較試験(RCT)、前向き観察研究、対照研究、横断研究、関連情報を持つ発表された要約であった。
- PAP療法を受けていないOSA患者やPAP使用前のIOPを比較群とした。
- PAP使用直後、1か月後、1年後のIOPの変化を報告している研究を含んだ。
- 品質評価には、Cochrane Risk of Bias tool version 2およびNIH study quality assessment tool for Before-After (Pre-Post) Studies with No Control Groupを使用した。
結果
- 本システマティックレビューでは、191人のOSA患者を含む10の臨床研究を分析した。
- 連続陽圧呼吸(CPAP)療法の使用は、直ちにIOPを上昇させたが、非CPAP使用者とは有意な差はなかった。
- CPAP使用1か月後および1年後には、ベースライン値からのIOPの有意な上昇が見られた。
結論
- 限定的な証拠はあるが、CPAP療法の使用、特に高い圧力での使用はIOPの上昇と関連していることを示唆している。
- ただし、この結果の確認または否定をするためには、良質なRCTによる高品質の証拠が必要である。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38689462,
[quote_source]: Singh M, Deokar K, Dutta S, Sinha BP and Katoch CDS. “Impact of positive airway pressure therapy on intraocular pressure in obstructive sleep apnea: A systematic review.” European journal of ophthalmology , no. (2024): 11206721241249502.