名古屋市天白区の天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。
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みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
今日はどんどん世間的に肩身が狭くなってもなかなかやめられないタバコ(喫煙)についてです。
タバコの身体への影響
「タバコは身体に悪い」というイメージはもう常識と言えると思います。しかしどのように悪影響を及ぼすのか正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。
結婚・家庭を持つなどで生命保険の加入を考える人は、かならず「喫煙の有無」をチェックされ、場合によっては保険料が大きく変わってしまうこともご存知だと思います。それだけ喫煙は「寿命を縮める」ということが明らかなのです。
今回はタバコと身体への影響を、少し歴史を交えながら、そして新型タバコについて私見を交えて解説していきたいと思います。
タバコの健康被害の歴史
タバコを作ることで、生活を成り立たせている人は世界をみれば非常に多くいます。日本でも大きな会社で国内に流通するタバコを管理していることはみなさんご存知だと思います。タバコは健康に害だからと一斉に販売中止となれば、大企業が崩れてしまうことも目に見えています。
このようにタバコをめぐる利害関係の影響もあり、実はタバコが身体に害であると認定されるまでにさまざまな論争があり、「有害」と認定されたのはわずか25年ほど前なのです。もちろんそれまでにもタバコが癌の発生と関連するという報告はいくつもありました。しかし、「無害」と主張する人たちの言い分では、偶然の要素や、交絡因子とよばれるデータの正確性を調整することを怠った内容が非常に多く見受けられました。「有害」と「無害」の主張の食い違いはアメリカで40年以上論争が続き、最終的に裁判にまで発展し「有害」と認められられたのは1996年のことなのです。そのため、意外にもタバコの害について、しっかり認識されてきたのは最近で、昔は吸う人が多かったのも頷ける結果かと思います。現在の解釈では、細かいメカニズムは省略しますが、肺の肺胞とよばれる部分が破壊されて起こる肺気腫のほか、肺癌や膀胱癌、大腸癌、胃癌などのリスクを上げ、心臓や血管の負担が増え、脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす確率があがります。また受動喫煙についてもこれらのリスクが同様に上がります。特に女性は身体が小さく、タバコの影響を受けやすいので、受動喫煙によるリスクも非常に心配です。いずれも命を取られる病気であることは間違いありませんので、タバコは確実に健康寿命を縮めると言えます。
医学の世界で「有害」や「無害」の判断を下すのは非常に難しい部分です。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種についても、「有害」と「無害」の主張がぶつかり合うのも、結局長い期間でデータをしっかり取ることが当然できていませんので仕方がないことだと思います。私の個人的見解では、データ的にはっきりしないワクチンの長期的な危険性について心配するよりも、新型コロナウイルスによる重症肺炎によって命を落とす危険のほうが怖いと思っておりますので、すくなくともご高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は接種をしたほうがいいとは思っています。
新型タバコはいい?悪い?
話を本題に戻します。加熱式タバコ、電子タバコと呼ばれるいわゆる新型タバコがここ数年で突然日本に広まってきました。伝統的なタバコは基本的に一つの企業しか取り扱うことができませんでしたが、新型タバコは法律上のタバコとやや違った解釈がされてしまっていますので、自由競争でさまざまな企業からいろんな種類のものが販売されています。外来患者さんから「新型タバコなら身体に影響がほとんどない」と思ったり、そう聞いたことがあると、話を聞く機会が非常に増えています。
それでは、新型タバコの影響を議論したいと思います。ここで、1996年にタバコが有害と判断されるまでの歴史が重要になってきます。新型タバコを作っている企業は、当然新型タバコの健康被害を大きくは認めたくありません。そのために都合の良いデータをたくさん持ってこようとします。そもそも最近出てきたばかりなので、観察期間が短く、正確なデータはほとんどないと言えます。そしてある程度データが出揃っても、例えば通常の喫煙者と新型タバコの喫煙者のデータの比較をするにしても、旧来のタバコから新型タバコに乗り換えたのか、それとも何も吸ったことない人が新型タバコを吸い始めたのかでも全く結果と解釈が変わるはずです。昔からの喫煙者と最近の新型タバコを吸い始めた人では、前者のほうが危険性が高いのは当たり前だと思います。都合の良い区間だけを区切って見れば、病気の発症率に差が出てしまうように作れなくもありません。「そんな当たり前のこと何言っているの?そんなことに騙されないよ!」と言う方もたくさんいらっしゃると思います。一般に一流雑誌や学会に掲載される論文データでは、このようなずさんなデータは排除されてしまいます。しかしそういったチェックを受けずに都合の良いデータだけを表記したり、都合がいいように、複雑に絡み合う「交絡因子」を調整することで「有害とは言えない」と表すことのできる統計学者もいると思います。大きな企業になればなるほど優秀な統計学者を雇って、数字のマジックを起こすことができます。
このように複雑な利害関係を含む問題ですから、現時点での新型タバコの「有害」「無害」の議論に確定した結果を導くことは困難だと思います。
最後に
新型タバコに関して、少なくとも言えることは「有益ではない」ということではないでしょうか。医者として、健康に良い成分が入っているとは到底言うことができません。むしろ今まで分かっていなかった有害成分が含まれることもあるかもしれません。私は健康面で新型タバコを許容することは決してできません。
数字のマジックに惑わされずに、しっかり判断できる人たちが増えてくることを祈っています。
全ては患者さんの「もっと早く禁煙しとけばよかった・・・」を無くしたいから。
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令和4年1月15日 天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣
・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
・がん治療認定医
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