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痛風の真実とは?尿酸が高くなる理由

「痛風」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

「贅沢病」「おじさんの病気」なんて言葉が頭をよぎった方もいるかもしれません。しかし、食生活の欧米化や生活習慣の変化に伴い、若い世代でも痛風のリスクが高まっていることをご存知でしょうか?

実は、痛風は体の中で毎日作られる「尿酸」という物質が深く関わっています。毎日の食事で口にするものから作られる尿酸が、ある日突然、耐え難い関節の痛みを引き起こす…それが痛風発作です。

この記事では、痛風の原因から症状、最新の治療法まで、具体的な例を交えながら分かりやすく解説していきます。自分の食生活や生活習慣を見直し、痛風の予防・改善に役立てていきましょう。

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痛風とは?症状・原因・発診メカニズムを解説

「痛風」って、よく聞く病気ですよね。でも、実際どんな病気なのか、はっきりとは分からない方も多いのではないでしょうか? 痛風は、体の中に「尿酸」という物質が溜まりすぎることで起こる病気です。この尿酸、実は毎日皆さんが口にしている食事と深い関わりがあるんです。

例えば、皆さんが大好きな焼き肉。お肉には「プリン体」というものが多く含まれていて、このプリン体が体の中で分解されると、尿酸が作られます。

尿酸自体は悪いものではありません。健康な状態であれば、尿酸は腎臓でろ過され、尿とともに体外へ排出されます。ところが、尿酸が作られすぎる、もしくは腎臓でうまく排出できない状態が続くと、どうなるでしょうか?

そうです。体の中に尿酸がどんどん溜まっていくことになるのです。そして、この尿酸が最終的に結晶化し、関節に溜まって激しい痛みを引き起こす…これが痛風発作です。

痛風発作の症状の特徴

痛風の一番つらい症状が、この「痛風発作」です。痛風発作は、ある日突然やってきます。まるで嵐のように、何の前触れもなく、激しい痛みが襲ってくるのです。

例えば、こんなケースがありました。私の患者さんで、普段からお酒が大好きで、よく友人と飲みに行っていた方がいました。彼はある朝、いつものように目覚めると、足の親指の付け根に経験したことのないような激痛が走ったそうです。

「まるで、熱い針で刺されているような、ガラスの破片が刺さったような、耐え難い痛みだった」と彼は言っていました。足の親指はみるみるうちに赤く腫れ上がり、歩くことさえままならない状態。これが痛風発作です。

痛風発作は、主に足の親指の付け根で起こることが多いのですが、足首、膝、肘、手の指など、体の様々な関節で起こる可能性があります。

部位 症状
足の親指の付け根 腫れ、赤み、熱感、激しい痛み
足首 腫れ、痛み、動きにくさ
腫れ、痛み、水が溜まる
腫れ、痛み、動きにくさ

痛みの強さも、軽い痛みから、歩くのも困難なほどの激痛まで、個人差があります。

痛風になりやすい人の特徴

では、一体どんな人が痛風になりやすいのでしょうか? 痛風は、男性、高齢者、肥満の人に多く見られます。

  • 男性: 実は、女性ホルモンには尿酸を体外に排出する働きがあるため、女性は男性に比べて痛風になりにくいのです。
  • 高齢者: 年齢を重ねるにつれて、腎臓の機能が低下し、尿酸が排泄されにくくなるため、高齢者は痛風のリスクが高まります。
  • 肥満: 肥満の人は、尿酸を産生する脂肪細胞が多いことが関係していると考えられています。

さらに、食生活も大きく影響しています。プリン体を多く含む食品を過剰に摂取すると、体内で尿酸が過剰に作られてしまいます。

  • プリン体を多く含む食品: 例えば、レバー、白子、たらこ、カツオ、エビ、干物などです。これらの食品は、確かに栄養価も高いのですが、摂りすぎると痛風のリスクを高める可能性があります。
  • アルコール: アルコールには、尿酸の分解を阻害したり、尿酸の排泄を抑制したりする作用があります。特に、ビールはプリン体を多く含んでいるため注意が必要です。
要因 説明
性別 男性は女性に比べて痛風になりやすい
年齢 高齢者は痛風のリスクが高まる
肥満 肥満は痛風の大きなリスク因子
食生活 プリン体の多い食品やアルコールの過剰摂取は痛風のリスクを高める
家族歴 痛風の家族がいる人は、痛風になりやすい

尿酸値が高いとどうなる?

健康診断で「尿酸値が高いですね」と指摘されたことはありませんか? 尿酸値が高い状態が続くと、体の中で尿酸が結晶化しやすくなり、関節に溜まってしまいます。そして、この尿酸の結晶が引き金となり、激しい炎症を引き起こす…これが痛風発作です。

尿酸値が高い状態を放置しておくと、痛風発作を繰り返すようになり、関節が変形したり、痛風結節と呼ばれる尿酸の結晶が皮膚の下に溜まってしまったりすることがあります。

さらに恐ろしいことに、痛風は腎臓病、心筋梗塞、脳梗塞といった、命に関わるような病気のリスクも高めることが分かっています。

痛風発作のメカニズム

痛風発作は、尿酸が体の中に過剰に溜まることで起こります。この尿酸、実は皆さんが毎日食べているものと密接に関係しています。

私たちの体は、食事から摂取したものをエネルギーに変えて日々活動しています。その過程で、必ず「ゴミ」が生じます。このゴミの一つが、尿酸です。尿酸は通常、腎臓という臓器でろ過され、尿として体外に排出されます。

しかし、尿酸が作られすぎる、もしくは尿として排出する力が弱まってしまうと、体の中に尿酸が溜まってしまいます。そして、尿酸が結晶化して関節に溜まり、白血球が攻撃することで炎症が起こります。これが痛風発作です。

痛風発作は、男性における最も一般的な関節炎です。高尿酸血症が続くと、尿酸結晶が関節内や関節周囲に沈着し、免疫系を過剰に活性化させてしまいます。

痛風発作の原因となる高尿酸血症の治療は、発作の初期から薬物療法を行うことが重要です。

痛風の診断と治療法

痛風は、適切な診断と治療によって、症状をコントロールし、健康的な生活を送ることができます。ここでは、痛風の診断と治療法について、詳しく解説していきます。

痛風の診察の流れ

皆さんは、病院で痛風を疑われたら、どんな検査や診察が行われるのか、疑問に思ったことはありませんか? ここでは、痛風の診察の流れについて、私のクリニックでの実際の例を交えながら具体的に説明します。

まず、診察室に入ってきた患者さんに、足の親指の付け根を指さしながら「先生、ここが痛くて…」と訴えられたとします。私は、患者さんの訴えを丁寧に聞き取りながら、痛風かどうかを見極めるために、いくつかの質問をします。

  • いつから痛みますか?
  • どれくらいの痛みですか?
  • どのような時に痛みますか?
  • 過去に同じような痛みを経験したことはありますか?
  • 食生活はどんな感じですか?
  • お酒はどのくらい飲みますか?

これらの質問を通して、私は患者さんが痛風である可能性が高いかどうかをある程度推測します。

次に、実際に患者さんの体を診察させていただきます。痛風の場合、足の親指の付け根の関節が赤く腫れ上がり、熱を持っていることが多いです。 また、関節に触れると強い痛みを訴えることもあります。

問診と診察である程度痛風が疑わしい場合は、血液検査を行います。血液検査では、血液中の尿酸値を測定します。尿酸値が7.0mg/dL以上であれば、高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は、痛風発作の大きなリスクファクターです。

さらに、関節液を採取して顕微鏡で観察し、尿酸結晶を確認することもあります。尿酸結晶は、痛風特有のものであり、顕微鏡で見ると針状の形をしています。痛風発作の最中には、関節液の中にたくさんの尿酸結晶が見られます。

痛風は、持続的な高尿酸血症が原因で、尿酸結晶が関節内や関節周囲に沈着し、免疫系を過剰に活性化させてしまいます。そのため、痛風発作の初期から薬物療法を行うことが重要です。

また、痛風の原因や合併症を調べるために、レントゲン検査や超音波検査を行うこともあります。例えば、尿路結石の有無を調べるために、腹部レントゲン検査や腹部超音波検査を行うことがあります。腎臓の機能を調べるために、血液検査や尿検査を行うこともあります。

痛風発作時の対処法

「先生、痛くて、痛くて、夜も眠れません!」

痛風発作が起こると、患者さんは大変な痛みを感じます。まるでガラスの破片が関節に突き刺さっているような、針で刺されているような、焼けるような激痛に襲われます。

痛風発作が起こったら、まずは安静にして患部を高くし、冷やしましょう。氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包んで患部に当てると効果的です。

痛みが強い場合は、無理せず市販の鎮痛剤を服用するのも良いでしょう。ただし、痛風発作時にアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用すると、症状が悪化することがありますので、注意が必要です。

自己判断せずに、まずは医療機関を受診しましょう。

痛風治療の3つの柱

痛風の治療は、「薬物療法」「食事療法」「生活習慣の改善」の3つの柱からなります。

薬物療法は、痛風発作の痛みや炎症を抑える薬と、尿酸値を下げる薬を症状に合わせて使用します。食事療法は、プリン体の多い食品を控え、尿酸値を下げることを目指します。生活習慣の改善は、適度な運動や水分補給、アルコール摂取の制限などを行い、健康的な生活習慣を維持することを目指します。

痛風治療で処方される薬

痛風治療では、痛風発作の症状を抑える薬と、尿酸値を下げて発作を予防する薬が使われます。

痛風発作時には、痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、副腎皮質ステロイドなどが処方されます。

尿酸値を下げる薬には、尿酸の排泄を促す薬と尿酸の生成を抑える薬の2種類があります。尿酸の排泄を促す薬には、プロベネシドやベンズブロマロンなどがあります。尿酸の生成を抑える薬には、アロプリノール、フェブキソスタットなどがあります。医師は、患者さんの症状や状態に合わせて、これらの薬を組み合わせて治療を行います。

痛風治療における食事療法の重要性

痛風は、食事の内容が大きく影響する病気です。特に、プリン体を多く含む食品は尿酸値を上昇させるため、注意が必要です。プリン体が多い食品には、レバーや白子などの動物の内臓、カツオやイワシなどの魚介類、ビールなどがあります。これらの食品を控えることはもちろんですが、バランスの取れた食事を心がけることも大切です。野菜や海藻、きのこなどを積極的に摂取し、食生活の改善を図りましょう。医師や管理栄養士の指導を受けることも有効です。

痛風を予防するためにできること

痛風発作は、文字通り「風が吹いただけでも痛い」と表現されるほどの激痛を伴います。しかし、痛風は生活習慣病の一種。適切な予防策を講じれば、発症リスクを大幅に抑え、健康な生活を送ることは十分に可能です。ここでは、痛風を予防するための具体的な方法について、私の経験を交えながら詳しく解説していきます。

尿酸値を下げる食事

食事は、体を作る基本となるもの。痛風の予防においても、毎日の食事の内容を見直すことは非常に重要です。ポイントは、尿酸値を上げる原因となるプリン体の摂取量をコントロールすることです。

プリン体は、細胞の核を構成する成分の一つで、細胞分裂が活発な組織に多く含まれています。レバーや白子、たらこなどの動物の内臓、カツオやイワシなどの魚介類は、プリン体を多く含む食品の代表例です。

外食が多いビジネスマンの方、お酒が好きな方の中には、これらの食品を頻繁に口にしている方もいるのではないでしょうか。しかし、高尿酸血症を予防するためには、これらの食品を控えることが重要です。

では、どのような食事を心がければ良いのでしょうか?

まず、野菜、海藻、きのこなど、プリン体が少なく、尿酸値を下げる効果が期待できる食材を積極的に食事に取り入れるようにしましょう。野菜に含まれるカリウムは、尿と一緒に尿酸を排泄する働きを助けます。海藻類に含まれるアルギン酸は、腸内で尿酸を吸着し、体外への排出を促します。

また、水分を十分に摂取することも重要です。水分摂取量を増やすことで、尿量が増加し、尿酸が体外に排出されやすくなります。1日に2リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。

痛風予防に効果的な生活習慣改善

痛風を予防するには、食生活の改善だけでなく、生活習慣全体を見直すことが重要です。

適度な運動は、尿酸値を下げる効果が期待できます。運動不足の人は、運動習慣のある人に比べて高尿酸血症のリスクが高いというデータもあります。激しい運動は逆効果になることもあるので、ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない運動を習慣にしましょう。

また、質の高い睡眠を十分に確保することも大切です。睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、尿酸値の上昇につながる可能性があります。規則正しい生活を心がけ、質の高い睡眠を十分に確保しましょう。

ストレスも、痛風のリスクを高める要因の一つです。ストレスを感じると、交感神経が優位になり、血管が収縮しやすくなります。すると、血流が悪くなり、尿酸が腎臓で排泄されにくくなってしまうのです。趣味を楽しんだり、リラックスできる時間を作ったりするなど、自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスを溜めないように心がけましょう。

痛風に関するよくある誤解と真実

痛風については、さまざまな情報が飛び交っていますが、中には誤解されているものもあります。

例えば、「痛風は男性だけの病気」という誤解があります。確かに、痛風は男性に多い病気ですが、女性だからといって安心はできません。女性ホルモンには尿酸値を下げる働きがありますが、閉経を迎えると女性ホルモンの分泌が減少し、尿酸値が上がりやすくなります。そのため、閉経後の女性は、男性と同じように痛風のリスクが高まることを認識しておく必要があります。

また、「痛風は一度発症したら治らない」という誤解も根強くあります。痛風は、尿酸値が高い状態が続くことで発症しますが、生活習慣の改善や薬物療法によって尿酸値をコントロールすることで、痛風発作を予防することができます。

さらに、「痛風は遺伝だから、予防しても意味がない」という声も耳にすることがあります。確かに、痛風は遺伝的要因も関係していますが、だからといって諦める必要はありません。遺伝的要因があっても、生活習慣を改善することで、発症リスクを抑えることができます。

痛風は、生活習慣病の一種です。食生活や運動習慣など、毎日の生活の中で予防に取り組むことが非常に大切です。

まとめ

痛風は、体内に尿酸が溜まりすぎることで起こる病気です。

プリン体の多い食品やアルコールの過剰摂取は尿酸値を上昇させるため、食生活の改善が重要です。適度な運動や十分な水分摂取も効果的です。痛風は生活習慣病の一種であり、適切な予防策によって発症リスクを抑え、健康な生活を送ることができます。

全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。

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令和6年11月9日 

天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣

・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医

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参考文献

  • Tausche AK, Aringer M. [Gouty arthritis]. Zeitschrift fur Rheumatologie 75, no. 9 (2016): 885-898.

追加情報

[title]: [Gouty arthritis].,

[summary]: ## 【タイトル】 痛風性関節炎

【要約】

  • 痛風性関節炎は、男性における最も一般的な関節炎です。
  • 持続的な高尿酸血症の結果、尿酸結晶が関節内および関節周囲空間に沈着し、自然免疫系を活性化します。
  • 下肢の急性に発症する単関節炎は、痛風発作を示唆する特徴です。
  • 関節エコーは、関節軟骨への結晶沈着の早期発見に使用できます。
  • 偏光顕微鏡で滑液中の尿酸結晶が検出されれば、細胞内尿酸結晶が検出されなくても痛風と診断されます。
  • 急性発作の治療には、速効性抗炎症薬が使用できます。
  • しかし、根本的な治療法は、初発から持続的な高尿酸血症の薬物療法であり、通常はアロプリノールまたはフェブキソスタットが用いられます。
  • 本稿は、現在得られているエビデンスに基づいて、痛風の病因、診断、治療に関する臨床的に重要な知識を概説しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27730304,

[quote_source]: Tausche AK and Aringer M. “[Gouty arthritis].” Zeitschrift fur Rheumatologie 75, no. 9 (2016): 885-898.