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内科の血液検査って何がわかるの?

あなたは、なんとなく体調がすぐれない、疲れやすい、あるいは健康診断で引っかかったことはありませんか? 実は、ほんのわずかな血液から、あなたの体の驚くべき秘密が解き明かされることをご存知でしょうか?

内科で行う血液検査は、まるで体の中を映し出す魔法の鏡。 糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病から、肝炎、腎臓病、感染症、そして貧血まで、様々な病気の早期発見・診断に役立ちます。近年注目されている赤血球分布幅(RDW)という指標に至っては、がんや心臓病のリスク評価にも役立つことが報告されています。

この記事では、内科の血液検査で何がわかるのか、具体的な検査項目と病気の関係、そして検査を受ける流れをわかりやすく解説します。もしかしたら、あなたの健康を守る重要なヒントが隠されているかもしれません。

【この記事の著者の紹介
】みなさんお待たせしました。専門医がお答えシリーズです!
お待たせし過ぎたかもしれませんし、誰もお待ちではないかもしれません。
内視鏡といえば天白橋。内科もやっぱり天白橋。天白橋内科内視鏡クリニックの院長野田です。

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内科で血液検査をする理由と目的

皆さんは、健康診断や人間ドックで血液検査を受けた経験はありますか?

健康診断などの血液検査では、自覚症状がない病気を早期発見できることがあります。

また、風邪のようなはっきりとした症状がある場合でも、原因を特定し、適切な治療法を選択するために血液検査は欠かせません。

さらに、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の治療を受けている方にとっては、血液検査は治療効果の確認や病状の管理に役立ちます。

このように、血液検査は、病気の早期発見、診断、治療効果の確認、そして健康管理まで、幅広い目的で活用されています。

なぜ内科で血液検査をするの?

内科では、風邪や腹痛といった日常的な症状から、生活習慣病、そして緊急性の高い症状まで、幅広い疾患に対応しています。

そのため、血液検査は内科診療において非常に重要な役割を担っています。

例えば、発熱や倦怠感を訴える患者さんが来院されたとします。

この場合、血液検査によって感染症の有無や炎症の程度を調べることができ、迅速な診断と適切な治療に繋げることができます。

また、健康診断で異常値が見つかった場合、精密検査が必要かどうかを判断するためにも血液検査は役立ちます。

私のクリニックでは、健康診断で肝機能の数値が少し高かった患者さんがいました。

そこで、追加の血液検査を行った結果、脂肪肝と診断し、生活習慣の改善指導を行いました。

このように、血液検査は、患者さんの健康状態を総合的に評価し、適切な医療を提供するために欠かせないツールなのです。

血液検査でわかること

血液検査では、血液中の様々な成分を分析することで、体内の状態を詳しく知ることができます。

具体的には、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞の数や機能、血糖値、コレステロール値、肝機能、腎機能、炎症反応など、多岐にわたる情報を得ることができます。

これらの情報は、貧血、感染症、糖尿病、脂質異常症、肝炎、腎臓病など、様々な病気の診断や治療効果の判定に役立ちます。

例えば、貧血の患者さんの場合、血液検査で赤血球の数やヘモグロビン濃度を測定することで、貧血の重症度や種類を判断することができます。

また、糖尿病の患者さんの場合、血糖値を定期的に測定することで、血糖コントロールの状態を把握し、治療方針を調整することができます。

どんな病気がわかるの?

血液検査でわかる病気は非常に多岐に渡ります。

代表的な例としては、糖尿病、脂質異常症、肝炎、腎臓病、貧血、感染症などが挙げられます。

また、血液検査は、痛風や甲状腺疾患などの診断にも役立ちます。

さらに、最近では、赤血球分布幅(RDW)という指標が注目されています。

RDWは赤血球の大きさのばらつきを示す値で、貧血の診断だけでなく、心臓病、静脈血栓塞栓症、がん、糖尿病などのリスク評価にも役立つことが報告されています。

例えば、私のクリニックでは、RDWが高い値を示した患者さんに、心臓病の精密検査を勧めた結果、早期に狭心症を発見できたケースがありました。

このように、血液検査は、様々な病気の診断やリスク評価に役立つ重要な検査なのです。

血液検査の種類

血液検査には様々な種類があり、それぞれ目的や検査項目が異なります。

一般的な血液検査では、赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン濃度、血糖値、コレステロール値、肝機能、腎機能などを調べます。

これは健康診断や人間ドックでよく行われる検査です。

特定の病気の検査としては、肝炎ウイルス検査、HIV検査、腫瘍マーカー検査などがあります。

これらの検査は、特定の病気の疑いがある場合や、経過観察のために実施されます。

また、血液凝固検査は、血液が固まりやすいかどうかを調べる検査で、手術前や出血傾向のある方に実施されます。

免疫検査は、免疫の状態を調べる検査で、アレルギーや自己免疫疾患の診断に役立ちます。

このように、血液検査の種類は多岐にわたり、患者さんの症状や目的に合わせて適切な検査が選択されます。

血液検査を受ける流れと費用

健康診断や人間ドックなどで血液検査を受ける機会は多いと思いますが、実際どのような流れで検査が行われ、何がわかるのか、費用はどれくらいかかるのか、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、天白橋内科内視鏡クリニックでの血液検査について、より詳しくご説明いたします。

血液検査を受ける際の流れ

当クリニックでは、患者さんの不安や疑問を解消し、安心して検査を受けていただけるよう、丁寧な対応を心がけています。血液検査の流れは以下のとおりです。

  1. 医師による診察(問診): まずは問診票にご記入いただいた内容を基に、現在の症状、過去の病気、生活習慣、お困りのことなどについて詳しくお伺いします。

例えば、「何となく疲れやすい」という症状一つとっても、貧血、甲状腺機能低下症、うつ病など、様々な病気が考えられます。

些細なことでも構いませんので、気になる症状や不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。

ご自身の言葉で症状を伝えることが、的確な診断への第一歩となります。

  1. 検査項目の決定と説明: 患者さんの症状や健康状態、問診内容に合わせて、必要な血液検査の項目を決定します。

なぜその検査が必要なのか、何がわかるのか、結果がどう治療に繋がるのかなど、検査内容について丁寧にご説明いたします。

ご不明な点があれば、ご遠慮なくご質問ください。

  1. 採血: 採血室で、経験豊富な看護師が採血を行います。

採血は、通常であればほんの数分で終了します。

患者さんの中には、注射針を見るだけで気分が悪くなってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

当クリニックでは、そのような患者さんにも安心して採血を受けていただけるよう、最大限の配慮を心がけています。

検査結果が出るまでの期間

検査結果が出るまでの期間は、検査項目によって異なります。

一般的な血液検査であれば、通常1週間以内に結果が出ます。

ただし、より詳細な検査が必要な場合や、外部の検査機関に委託する場合は、2~3週間程度かかることもあります。

検査結果が出次第、ご連絡いたしますので、ご都合の良い日にご来院ください。

血液検査の費用

血液検査の費用は、検査項目の数や種類、健康保険の適用状況によって異なります。

健康保険が適用される場合は、3割負担の方で1,000円~3,000円程度が目安となります。

ただし、検査項目によっては、保険適用外となる場合もあります。

費用についてご不明な点は、お気軽に受付スタッフまでお尋ねください。

おおよその費用についても、事前にご説明させていただきますのでご安心ください。

検査前後の食事制限

血液検査の中には、検査結果の精度を保つために、食事制限が必要な場合があります。

例えば、血糖値やコレステロール値を調べる場合、検査前8時間以上の絶食が必要になります。

水分は摂取しても構いませんが、糖分やカフェインを含む飲み物は避けてください。

必要な場合は、医師または看護師から事前に詳しい説明がありますので、ご安心ください。

検査後、特に食事制限はありません。

ただし、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

よくある質問:採血は痛い?副作用は?

採血の痛みについては、多くの方が気にされていることと思います。

採血の際は、細い針を使用するため、チクッとした痛みを一瞬感じる程度です。

注射が苦手な方でも、ほとんどの場合問題ありません。

採血後に、内出血や軽い痛み、腫れが出ることもありますが、通常は数日で自然に治まります。

ごくまれに、感染症などの副作用が起こる可能性もありますが、当クリニックでは衛生管理を徹底し、安全な採血を心がけておりますので、ご安心ください。

万が一、気になる症状が出た場合は、すぐにご連絡ください。

例えば、過去に私が担当した患者さんのケースでは、採血後に腕が赤く腫れ上がり、痛みを訴える方がいらっしゃいました。

診察の結果、採血部位の血管が炎症を起こしていることがわかり、適切な処置を行いました。

このように、万が一、副作用が生じた場合でも、迅速に対応いたしますのでご安心ください。

血液検査でわかる具体的な項目と病気

血液検査は、皆さんの体の中を覗ける魔法の窓のようなものです。ほんの少しの血液から、様々なことが分かります。今回は、内科でよく行う血液検査で何が分かるのか、そして、どんな病気の手がかりになるのかを、具体的な例を交えながら分かりやすく説明します。

血糖値(糖尿病、血糖値スパイクなど)

血糖値は、血液中のブドウ糖の量を示す数値です。

食事をすると血糖値は上昇しますが、通常はインスリンというホルモンの働きで一定の範囲内に収まります。

しかし、インスリンの働きが悪くなると血糖値が高い状態が続き、糖尿病のリスクが高まります。

健康診断で血糖値が高いと指摘された経験がある方もいるかもしれません。

糖尿病は初期には自覚症状がない場合が多く、放置すると合併症を引き起こすリスクがあるため、早期発見と適切な管理が重要です。

また、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も、血管を傷つけ動脈硬化のリスクを高めるため注意が必要です。

例えば、私のクリニックでは、健康診断で血糖値が少し高めだった50代の男性に、精密検査を受けていただいたところ、糖尿病の初期段階であることが判明しました。

食事療法と運動療法を開始することで、血糖値は正常範囲に戻り、合併症の予防にも繋がりました。

コレステロール(脂質異常症、動脈硬化など)

コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料となる重要な物質ですが、血液中のコレステロール値が高すぎると、血管壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化を引き起こす可能性があります。

動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などの生命に関わる病気を引き起こす危険因子です。

コレステロールには、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)があり、LDLコレステロールが高いほど、HDLコレステロールが低いほど動脈硬化のリスクが高まります。

また、中性脂肪も動脈硬化のリスクを高める因子の一つです。

脂質異常症は、これらのコレステロールや中性脂肪の値が異常な状態を指します。

私のクリニックでは、60代の女性で、コレステロール値が高いことを気にされていた方がいらっしゃいました。

精密検査の結果、脂質異常症と診断し、食事療法と薬物療法を開始しました。

その後、コレステロール値は改善し、動脈硬化のリスクを低減することができました。

肝機能(肝炎、肝硬変など)

肝臓は、栄養素の代謝や解毒など、500以上もの機能を担う重要な臓器です。

肝機能検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの酵素の値を測定することで、肝臓の炎症や損傷の程度を評価します。

これらの数値が上昇している場合は、肝炎、肝硬変、脂肪肝などの病気が疑われます。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期段階では自覚症状が現れにくいのが特徴です。

そのため、定期的な血液検査で肝機能をチェックすることが大切です。

以前、私のクリニックを受診された40代の男性は、健康診断で肝機能の数値が異常だと指摘されていました。

精密検査の結果、B型肝炎ウイルスキャリアであることが判明しました。

幸いにも、早期発見できたため、適切な治療と経過観察を続けることで、重症化を防ぐことができています。

腎機能(腎不全など)

腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分を尿として排出する働きをしています。

腎機能検査では、クレアチニン、eGFRなどの値を測定することで、腎臓の働きを評価します。

これらの数値が悪化している場合は、腎不全などの病気が疑われます。

腎不全も初期には自覚症状が現れにくいため、血液検査による早期発見が重要です。

70代の女性で、最近疲れやすくなったと訴える患者さんがいました。

血液検査の結果、腎機能の低下が見られたため、精密検査を行いました。

結果、慢性腎臓病と診断され、適切な治療を開始することができました。

早期発見と適切な治療によって、腎機能の低下を遅らせることができます。

炎症反応(感染症など)

炎症反応は、体を守るための防御反応ですが、炎症が長引いたり過剰に起こったりすると体に悪影響を及ぼす可能性があります。

CRPや白血球数は、炎症の程度を評価する指標です。

これらの数値が高い場合は、細菌感染症や自己免疫疾患などが疑われます。

風邪をひいたときに血液検査を受けると、CRPや白血球数の上昇が見られることがあります。

これは、体が感染症と闘っているサインです。

貧血(鉄欠乏性貧血、悪性貧血など)

貧血は、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態です。

貧血になると、酸素が体全体に行き渡らなくなり、疲れやすさ、息切れ、動悸、めまいなどの症状が現れます。

血液検査では、ヘモグロビン濃度や赤血球数などを測定することで貧血の有無や重症度を評価します。

貧血には様々な種類があり、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血などがあります。

20代の女性で、生理が重い、立ちくらみがするといった症状で来院された方がいました。

血液検査の結果、鉄欠乏性貧血と診断され、鉄剤の処方を行いました。

鉄剤を服用することで、症状は改善し、日常生活を送れるようになりました。

赤血球分布幅(RDW)(心臓病、静脈血栓塞栓症、がん、糖尿病など)

赤血球分布幅(RDW)は、赤血球の大きさのばらつきを示す数値です。

RDWは、従来貧血の診断に用いられてきましたが、近年の研究で心臓病、静脈血栓塞栓症、がん、糖尿病などの様々な疾患のリスク上昇と関連することが示唆されています。

RDWは赤血球恒常性の調節不全を反映しており、テロメア長の短縮、酸化ストレス、炎症、栄養状態の不良など様々な要因が関与していると考えられています。

例えば、私のクリニックに定期的に通院されている70代の男性のRDW値が徐々に上昇してきたため、心臓の精密検査を勧めたところ、軽度の心不機能が見つかりました。

幸い早期発見であったため、適切な治療を開始することができ、現在も元気に過ごされています。

RDWはそれ単独で特定の病気を診断できるわけではありませんが、他の検査結果と合わせて総合的に判断することで、病気の早期発見やリスク評価に役立つ可能性があります。

まとめ

内科の血液検査は、幅広い疾患の早期発見、診断、治療効果の確認、健康管理に役立ちます。

血液検査では、血液中の様々な成分を分析し、貧血、感染症、糖尿病、脂質異常症、肝炎、腎臓病など多くの病気に関する情報を得られます。血糖値、コレステロール値、肝機能、腎機能、炎症反応、貧血の有無など、多岐にわたる項目を検査可能です。

さらに、赤血球分布幅(RDW)は、心臓病、静脈血栓塞栓症、がん、糖尿病などのリスク評価にも役立ちます。

検査は医師の問診、検査項目決定と説明、採血の流れで行われ、費用は保険適用で1,000円~3,000円程度が目安です。検査項目によっては食事制限が必要な場合もあります。

全ては患者さんの「もっと早く治療しとけばよかった・・・」を無くしたいから。

詳しくは当院のホームページ(←こちらをクリック)からどうぞ。


 

令和6年11月9日 

天白橋内科内視鏡クリニック 野田久嗣

・医学博士
・日本内科学会認定内科医
・日本消化器病学会消化器病専門医
・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医

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参考文献

  • Salvagno GL, Sanchis-Gomar F, Picanza A, Lippi G. Red blood cell distribution width: A simple parameter with multiple clinical applications. Critical reviews in clinical laboratory sciences 52, no. 2 (2015): 86-105.

追加情報

[title]: Red blood cell distribution width: A simple parameter with multiple clinical applications.,

赤血球分布幅(RDW):多様な臨床的応用を持つシンプルなパラメータ

【要約】

  • 赤血球分布幅(RDW)は、赤血球の大きさのばらつき(異形赤血球)を反映するシンプルで安価なパラメータであり、従来は貧血の鑑別診断に血液学的検査で用いられてきた。

  • しかしながら、最近のエビデンスでは、異形赤血球は、心臓病、静脈血栓塞栓症、癌、糖尿病、市中肺炎、慢性閉塞性肺疾患、肝臓・腎臓不全など、人間の疾患でよく見られることが示されている。

  • RDWは、多くの疾患の診断において高い陰性予測値を示し、短期・長期の予後についても重要な情報を提供する。

  • さらに重要なことに、RDWの値は、一般集団における死亡のリスク因子としても注目されている。

  • RDWの上昇がリスク因子なのか、それとも基礎となる生物学的・代謝的バランスの乱れの副次的現象なのかは明確になっていないが、貧血の鑑別診断を超えた幅広い評価が必要であると考えられる。

  • RDWの上昇は、テロメア長の短縮、酸化ストレス、炎症、栄養状態の不良、脂質異常症、高血圧、赤血球の断片化、エリスロポエチン機能の変化など、さまざまな基礎代謝異常による、赤血球生成の障害と異常な赤血球生存の両方を伴う、赤血球恒常性の深刻な調節不全を反映している。

  • 本稿の目的は、RDWとそのルーチン評価に関する一般的な情報を提供し、健康と疾患における最も関連性の高い影響を概観し、潜在的な臨床応用に関する洞察を与えることである。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25535770,

[quote_source]: Salvagno GL, Sanchis-Gomar F, Picanza A and Lippi G. “Red blood cell distribution width: A simple parameter with multiple clinical applications.” Critical reviews in clinical laboratory sciences 52, no. 2 (2015): 86-105.